ひとり | ナノ



11


彼女の言葉は、俺を嫌っていないと気付かせるもので。
俺は、嬉しくても涙が出る、その理由を理解した。
泣いている俺を見て、彼女は焦ったように俺の頬を撫でた。
その手に自分の手を当てて、怪我は?と聞く。
だいじょうぶ、おんなはつよいのよ
初めて握手した時と同じ言葉。
彼女に抱きついた。
氷雨、氷雨、氷雨。
無事で嬉しい、また会いに来てくれて嬉しい、俺の名前を呼んでくれて嬉しい。
ぎゅう、と力を込める。
ふわり、といい匂いがした。
彼女が一瞬固まったものの、ぽんぽんと俺の背中を叩く。
しんぱいしてくれて、ありがとう
優しく包み込まれるように抱きしめられ、彼女の香りに包まれる。
その香りに安心して、睡魔に襲われる。
おやすみ、セフィロスくん
眠りに落ちる瞬間、そう、声が聞こえた気がする。
次の日、弾かれるようにベッドから起き上がった、彼女は、どこだ。
自分の部屋から飛び出す。
おはよう、セフィロスくん、よくねむれた?
首を傾げながら、俺の方を向いている氷雨がいた。
夢、じゃない。
彼女が帰って来たのは夢じゃない、俺の妄想じゃない。
駆け寄って、抱きつく。
わ、あぶないよ、どうしたの?
困ったように笑う彼女は、相変わらずいい匂いがする。
彼女は食事を作っていた手を止めて、俺の頭に手を乗せてくれた。
優しい感触にまた、泣きそうになる。
でも、泣き顔を見せるのは恥ずかしいので、ぎゅ、と腕に力を込めることで我慢。
俺は、彼女を守れるように強くなる、もう、あんなことがないように。
そう思って、彼女を見ると、綺麗な笑顔がそこにあって、

セフィロスくん、だいすきだよ


理解できなかった。
(それは、俺には唐突過ぎて)
(でも、次の瞬間はあまりに嬉しくて、思わず涙がこぼれた)

「俺、強くなる、氷雨を守れるように」

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