ひとり | ナノ



10


俺は、彼女に嫌われてしまっているのだろうか。
部屋に帰ってそのことだけを考えた。
何日も、同じことを考えた。
いや、考えたくなくても、そのことしか考えられなかった。
考えすぎて眠れない、食事も喉を通らない…でも、それでいいと思った。
氷雨は俺に優しかった。
それは、俺自身がよくわかる。
この忌み嫌われる銀髪も、ほとんどの人間が合わせてくれない目も。
綺麗だと褒めてくれた、好きだと言ってくれた。
慈しんで、くれた。
だが、俺はどうだっただろうか。
彼女に優しく接していただろうか、なにか嫌なことはしなかっただろうか。
それとも…彼女も、俺のことを化け物だと思っていた?
この年齢から刀を振り、モンスターの命を奪う俺は。
どう、見えるのだろうか。
身を呈して俺を守った氷雨は、何を考えてそんなことをしたのだろうか。
守られなくても、大丈夫だった。
彼女があんな大怪我する必要は、何処にもなくて。
俺がいなければ、彼女は怪我をする必要はなかったのだろうか。
俺が彼女に甘えていたから。
ぽたり、シーツに染みが出来る。
おれが、いたから?
だって、化け物なのだから、好きなものを、大切なものを、壊してしまうのかもしれない。
今回は助かったけれど、次は、どうなる?
つぅ、と冷や汗が背中を伝った。
嫌だ、彼女が死んでしまうなんて、俺は、
ぎゅうとシーツを握りしめたその時だった。
扉がノックされる。
重たい体を引きずって、扉を開けた。
華奢な足が目に入り、弾かれたように顔を上げる。
ただいま、セフィロスくん

彼女が、氷雨が、そこで笑っていた。


優しい声に涙がこぼれた。
(近くにいない方がいいと思った、我慢しようと思った)
(でも、そんな想いが無くなる程に彼女が優しく名を呼んでくれたから)

「どうしたの?泣かないで、私がいるよ。」

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