Agapanthus | ナノ



02


紺色のクロップドパンツに、クリーム色のブラウス。
落ち着いた色合いの化粧と、高めのヒールにA4サイズの仕舞える大きめのバック。
ふぅ、とため息をついた女性は、ゆっくりと瞬いてバックを肩に背負い直す。
と、それを止める大きな掌。
そちらを見上げれば、そこには麗しいと称するのだろう同僚がわかりにくい表情で咎めていた。
ミルキーホワイトのチノパンに水色の細かいチェックの入ったYシャツ、その上に紺のニットのベストを合わせている。
彼の青みがかった銀色の長い髪は女性以上に長く、彼の膝裏ほどまであるだろうか。
邪魔だからと、高すぎない位置でポニーテールにしてある。

「休憩するべきですよ…それくらいなら、私も手伝いますから」
「…ありがとう、江雪」

少しだけ気の抜けた笑みを零した彼女は、うん、とひとつ頷いてバックを自分の机に置いた。
と、そこに一人の女性社員が駆け寄ってくる。

「あ、あの!日華先輩!」
「…?どうしたの?」
「ご相談したいことが、ありまして!」

頬を小さく染めながら必死に告げる後輩は、可愛らしいブラウスに、膝丈のフレアスカート、花のコサージュのついた上着。
そのふわりとしたフレアスカートをまるで子供のようにぎゅうと握って、緊張した面持ちで伺っている。
ぱちり、とひとつ瞬いた彼女はどうしたの?ともう一度繰り返した。

「あの、私…入籍することになって、その、先輩の行きつけの喫茶店さんで、パーティーしたくて!」
「…依頼すれば、受けてくれると思うけど…あそこそんなに人数はいらないわよ?確か20人ぐらい」
「人数は、大丈夫です!その、それで、」

後輩はまっすぐに彼女を見つめながら言う。
瞳が潤んできているのは、彼女が怖いからではなく、緊張しいゆえだ。
そんな二人のやりとりを見つめていた江雪は二人の肩を叩いて、注意を引きつける。
突然話を振られて困惑したままの彼女と、必死すぎて周りが見えていなかった後輩はハッと気がつく。

「その話の続きは、喫茶店で…」
「…そうですね、ついでに休憩したいし。頼めそうなら頼んじゃおうか」
「いっ、いいんですか?!」

ぴん、と背筋を伸ばした後輩は、キラキラとした瞳で彼女を見つめた。
その視線に居心地悪そうにもぞりと動いてから、二人はその喫茶店、紫君子蘭へ向かう。
会社から出て、徒歩10分。
ゆっくりと扉を開けば、カラン、と鐘がなった。
店内には誰もおらず、カウンター席で白い髪の少年が食事を取っている。

「日華、どうしたの?この時間に休憩?」
「まあね、ティーセット2つお願い」
「はいはーい、おまかせあれ。好きな席にどーぞ」

店主は楽しそうに笑って、カウンターの奥へ向かった。
4人掛けのテーブル席にまっすぐ向かった彼女は、席についてすぐ、後輩の顔を見つめる。
カウンターの方から、ばみ君は座ってていいよーという声が小さく聞こえてくる。
後輩は一度深呼吸して話し始めた、途中ティーセットが置かれても止まることなく話し続けられたそれは要点がまとめられ20分ほどで終わる。
結婚式…披露宴については普通に社員も呼ぶこと、だが、直属の先輩であり世話になった彼女は会社の出張が入っていること。
それでも、感謝が伝えたくて、小さなパーティーを開くこと。
偶然、新婦側の友人もその日はすでに予定が入っていると断られてしまったことも重なったそうだ。

「なるほど、じゃあ頼んでみようか。氷雨ー!」
「はいはーい?」
「あ!私が自分で頼んできます!」

ばっと席を立った後輩は店主の元まで向かい、ペコペコと頭を下げている。
と、からん、と音が響き水色の髪の男性が喫茶店に入ってくる。
白のカットソーに髪色と同じような明るい水色のパーカー、それから、黒のズボンにスニーカー。
…着る人を選びそうだが彼は平然と着こなしている。
彼はばみ君に声をかける。
親しく話をしているように見えるが、どんな関係なのだろうか?

「いち…?」
「…財布を……?」
「……だが、氷雨さんが…と…くれた」

ところどころ聞こえてくる声は声を落として話をしているからだろう、最後にホッとしたように目を細めた青年の表情はとても優しかった。

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