絶望
どうすればいいのか、全くといっていい程わからなかった。
混乱していると言ってもいい。
それでも、ただ此処に居るだけではいけないと、わかっていた。
ふらりと立ち上がり、剣を手に持った。
いざとなったら、これを売れば、お金は手に入る筈だから。
だが、人の住む場所は、ここから遠く離れていることも、同時にわかった。
絶望、だった。
それから、2週間は、地獄だ。
餓えた。
現代で感じたことのないような、絶対的な餓え。
そして、孤独感。
メールも、電話も、何もない。
夜が怖くなり、人とあえたとしても、知り合いが誰一人としていない事実に絶望した。
言葉さえも、忘れてしまうのではないかと不安になった。
一日一日が必死で、他の命を奪うことも経験した。
夢ではないと、現実なのだと、自分の痛みを持って思い知らされた。
そんな、ある日だった。
「ばっ、化け物だッ!」
「おらたちの村に近づくなッ!」
見つけた村だったが、石を投げられ、刃物を向けられる。
言葉はわかった。
それでも、私が何かを喋ることは許されず、ただ、嫌悪と恐怖だけ。
最初は理由がわからなかった。
でも、すぐに、青い目が原因だとわかった。
私の目の青は遠くからでも目立つような青だった。
暗い所では、それ程目立たないようだけれど、それでも、私の絶望は深い。
涙は枯れることなく流れた。
これ以上の辛さは、ないのだろう、と漠然と考えていた。
それでも、
「へぇ、青い目か、珍しいから良い値がつくだろ」
「あ、不気味じゃねーかよ、ま、お偉いさんの考えはわからねぇけどよ」
「確か、孫呉の次男かなんかが青目なんじゃなかったか?」
「いやいや、アレは緑だって話だ、この青は流石に気持ちわりィだろ」
私を見ながら、好き勝手言っている山賊たち。
撃剣をぎゅうと握る。
黙っちゃって、怖いのかな?と言われた瞬間、何かが切れた。
「黙れッ」
圧倒的な武、それは、こんな山賊たちに負けるようなものではない。
わかりきっていたことだった。
返り血で紅く染まった私は、泣きもせず、ただ天を仰いでいた。
絶望ああ、これがどん底なのか、私は唐突に理解する。
辛いと、苦しいと、不思議と思うことはできなかった。