夢現
夢うつつの状況で問いかけられた。
「神隠しの原因は、何だと思う?」
だから私は答えたのだ。
「神様に好かれたか、偶然」
私に問いかけた誰かは笑った。
「なるほど、じゃぁ、君は後者からの前者だ」
心地よい眠りであったはずが、違和感に気がついた。
私の身の回りに、寝ている人間に対してのそんな質問をする人間は…多分いない筈。
寝ぼけている所為で見逃しているのかもしれないが。
「…誰?」
「やっと気がついたかい?眠り姫」
「誰?!」
流石に、私に向かって、眠り姫なんて驚きの発言をする奴は知らん。
ばっと目を開き、起き上がった。
…草原だった。
ぱちくり、音にすればこんな感じだろう。
私は一体何時草原にやってきたのか。
首を傾げ、眉を寄せ、それから、声をかけてきた人を探す。
「君は、残念ながら、巻き込まれた」
「は?何に?つか、どういうこと?」
「一人の少女が望んだことに、そして、その少女の望みの一部が君のものになった」
訳が分からない。
そして、声の主らしき人間も見当たらない。
「少女は帰れる可能性を持つ、だが、君は決して帰れはしない」
「ちょっと待って、君は、何を、」
その声には抑揚はない。
感情もそこまで乗っているようには感じない。
つまり、義務的な声と言えばいいのだろうか。
内容については、考えたくもない。
「君の能力は、怪我に対する回復力と青く見通せる目、そして、圧倒的な武力」
「ねえ、待ってってば、」
「君の武器は、迅雷剣と撃剣かな、その内槍辺りを練習しておくといい」
がしゃん、目の前に武器が落ちてきた。
そして、そこから先、声は一切聞こえてこなくなる。
嘘でしょう?と辺りを見回しても何も変わらない。
信じられない事実が広がっているだけだ。
…これは夢かもしれない、でも、一応、今言われたことを整理しよう。
まず、私は巻き込まれた、らしい。
しかも、その元凶の“帰れる可能性を持つ”少女の願いが“決して帰れない”私の一部になっている。
その願いの一部は、“怪我に対する回復力”、“青く見通せる目”、“圧倒的な武力”の3つ。
最初のは怪我に対する、と前置きがあるから、病気には効かないのだろう。
二つ目の青く見通せる目、青く、の部分はわからないが、見通せる目の意味は本能的にわかっている。
視ようとしなくても、この土地の情報が、今の私の置かれている状況が入ってくる。
視ようとすれば、きっと、もう少し遠くの情報までわかるのだろうことも、理解した。
最後の圧倒的な武力は、そのままだろう。
「ほんと、訳わかんない」
軽く首を左右に振った。
夢現信じたくはないし、信じられることではない。
それでも、与えられた事実を受け止めなくてはならないらしい。