悪逆 | ナノ



噂に違わぬその実力
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父上は言われた通りにすぐ共闘依頼を出した。
すぐに了承されたそれに代わり、俺が彼方の国へ向かう。
そこでの戦は、酷く簡単なものだと聞いていた。
実際、かの国にとっては酷く簡単なものだったのだろう。
俺は自分の力不足を強く感じることになった。

噂に違わぬその実力

騙された、のだろう、とは思う。
だが、それが本当に騙されているのか、自分自身の力不足が原因かはわからない。
兎にも角にも、俺は苦戦していた。
三人の敵将と対しながら、槍を振り抜く。
その瞬間、だった。
凄まじい勢いで、何かが突っ込んでくる。

「将か、ちょうどいい」

俺をちらりとも見ずに、破城槍を振るうあの女君主。
一対三であることを物ともせず、瞬間的に決着を付ける。
少し痛ましそうな、複雑な表情を見せながら、ピィと馬笛を吹いた。
一瞬だけ俺を確認するように視線を向け、赤兎馬が来る瞬間に団結を使う。
後ろから走ってくる赤兎馬の足が止まる前に飛び乗り、そのまま駆けていく。
回復した自分の身体を確認し、ただ、信じられず彼女の背を目で追った。
それからすぐ、勝鬨が上がる。

「焔、よくやった」

ゆっくりと赤兎馬を歩かせながら、柔らかに笑う彼女。
父上の言っていることが、少しだけわかった気がした。
が、更に驚いたのはそのあと。
戦を終えた後の処理能力だった。

「…貴女は、どうして、」
「今、無理な言葉使いをする必要は無い…誰も聞いておらぬよ」

宴会に夢中だからな。
そういいながら、横目で宴会場を一瞥した彼女は、一人竹簡に目を通していた。

「アンタは、参加しないのか?」
「嫌われ者の上司がいては、部下も羽を休められぬだろうが」

お前は行かずともいいのか、無表情に此方をちらと伺う素振りも見せず続ける。
確かに、戦は苛烈であった。
今でも脳裏に残っている、と言っても過言ではないくらいの鮮烈さで。
しかし、政治やそれ以外の部分では、決して苛烈ではなかった。

「ああ、そうだ、帰るときにはこれをもって行け」

ぽい、と適当に投げられたそれを広げる。
父上が送ったと言う縁談の断わり状だ。
それを手にして、俺は、何も言えず悩み始めることしか出来なかった。

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