悪逆 | ナノ



反論できる隙間すらない
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聞かされた事実に反抗した。

「何を考えているのですか、父上!」
「なにを、等と、聞くまでもないことだろう?」

反論できる隙間すらない

父上から聞かされたのは、俺の縁談。
確かに、あの土地を奪うのには、それが一番いい方法だろう。
国として考えるのであれば、利点しか見当たらない。
だが、何故、俺があの女と婚姻せねばならない。
アレは悪だ。
そう思って眉を寄せる。

「まあまあ、若、落ち着きなってー」
「馬岱!お前はわかっているのか」
「隣国の君主さんでしょ?あの、苛烈で有名な」

あっけらかんと答える従兄弟に思わず殺意が芽生える。
思わず睨みつけると、おお怖い、とふざけた調子で肩をすくめた。
正面で父上がため息を吐く。

「アレが苛烈とは…馬岱もまだまだということか」
「え、殿?どういうことです?」
「本質を見ろ、噂に惑わされずにな」

そう告げると、外から部下の声が響く。
それは、噂の主が現れたことを伝えるもので。
開かれた扉から、着飾りすらしない女君主が現れた。

「来たのか…この間の返事か?」
「…本人に許可を得ていない縁談は如何と思うが、生憎とそのように能天気な話ではない」

感情の見えない声と表情。
父上が思い切り眉を寄せた。
俺たちを下がらせようとするが、それを女君主が止める。
温度を感じさせない冷めた目で俺と馬岱を順に見る。

「国を知りたいのであれば、出て行かせる必要は無い」
「お前がいいのなら、な」
「…探られて痛い腹など無い。それよりも、だ。この間、聞き出したのだが、」

お前の国が狙われている。
女は静かにそう言った。
そこから続けられたのは、この女の部下に別の国の間者がおり、ソイツが情報を流したらしい。
で、この女の国を攻めると同時に俺たちの国を攻めるつもりらしい。
しかし、契約によって、俺たちはこの女と共闘しなくてはならない。
思わず、舌打ちをする。

「…それで?どうしろと?」
「共闘依頼を出せ、了承してやる…ついでに、前もって部下を置いていく」
「ほう?誰だ?」
「最近入ってきたばかりの男なのだがな、…関索!」

女君主は誰かの名前を呼んだ。

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