鬼神 | ナノ



にくまん 1/1


「あー、兄上肉まん食べてるんですか?」
「やらんぞ、これは私の氷雨が作った肉まんだ」
「兄上から肉まんを奪うなんて馬鹿なマネしませんよ」

肩をすくめて司馬昭様は笑う。
司馬師様は一瞬だけ不機嫌そうな顔をして、肉まんにかぶりついた。
キラキラした空気が此方にまでやってくる。
張春華様に聞いてみようか、肉まん一日二つにしていいかと。
かなり前から、一日一つでお昼は辛そうなんだよね…成長期だからかなぁ。
小さくはない肉まんをペロリと食べ切った司馬師様は少し名残惜しそうに蒸籠を見つめた。
やっぱり足りないよねぇ…では片付けてきます、と司馬昭様に少々お待ちください、と頭を下げる。
と、厨に向かう途中で張春華様に出会った。

「張春華様、お願いしたいことが、」
「子元の肉まんのことかしら?」
「は、はい!」

この人は一体何を何処まで知っているのか。
逆らっても、何か企んでも殺されそうだ。
勿論、司馬師様を裏切るつもりなどこれっぽっちも無いが。
張春華様はにこり、と微笑んだ。

「私にも小さくした同じものをいただけるなら、三つあげていいわ」
「あ、ありがとうございます!」

厨に戻って、すぐに二つ新しく作る。
が、小さいものは初めて作るので、分量を間違えたらしい。
小さいものが一種類につき二つずつ出来てしまった。
まあ、自分で食べればいいか、とまず張春華様の元へ届け、司馬師様の部屋へ向かう。
喜んでくれるだろうか、迷惑だと思われたりしないだろうか。
なんて思いながらも、声をかける。

「どういうことだ?…入れ」
「張春華様に許可をいただきまして、肉まんは一日三つとなりました」
「!?」
「ご迷惑でしたら、」
「迷惑などではない!」

熱の入った声にビックリするが、静かに頬をつり上げる。
喜んでもらえることが、一番嬉しいのだ。
と、司馬昭様が首を傾げる。

「で、そっちの小さいのは?」
「此方は、張春華様へ渡したものと同じ大きさの余り物です」

自分で処理しようかと、と口にした時、司馬昭様の隣に賈充様が立っている事実に気がついた。
肉まん作ってたものね、時間はかなり経ってるものね。
ひくり、と頬を引きつらせて、お待たせしてしまったようで申し訳ありませんと頭を下げた。
彼はにやりと笑い、私の手元を示した。

「ならばそれを要求しよう」
「これを、ですか?お口に合うか不安ではありますが」
「構わん、司馬師殿があれほど美味しそうにしているのだ」

もぐもぐと一心不乱に食べている司馬師様をちらりと見て、可愛らしい方だと思ってから、頷く。
ふたを開けると、一つをひょい、と横から出てきた手が掻っ攫っていった。
司馬昭様のようだ。
一口で食べた司馬昭様と、ため息を吐きながらもうひとつを手に取った賈充殿。

「司馬昭様の方は野菜が中心のもの、賈充殿の方は司馬師様の一番のお気に入りの味です」
「味違ったのかよ…!」
「司馬師様のためですから、手間を惜しむことはありません。では、今日の分を始めましょうか」

にこり、と笑ってから、賈充殿の持ってきていた竹簡を受け取る。
机に広げて、その隣に布を広げた。
薄墨をつけた筆を差し出して、まず、地図を起こしてみましょう、と告げる。
ぱちり、瞬いた司馬昭様はおう、と笑って筆を取った。

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