鬼神 | ナノ



なかよし 1/1


何度も教師役をやってわかったことがある。
司馬昭様は柔軟な思考回路を持っている。
また、性格的な問題で、大きな器の部分を見せたくはないらしい。
それよりも、支える方が向いているのだろう、と思う。

「ってことは、敵はこっちから、こう…か?」
「そう来た場合、司馬昭様はどう防ぎますか?」
「んー、こう来る訳だから…此処だな、此処を落とす」
「流石です、では、敵が此方から向かった場合はどうされますか?」
「えっ?!」

驚いた顔にくすりと笑った。

「ここ、ご自身で描かれた道でしょう?お忘れですか?」
「あ…ってことは正面から当たるのはダメかよー」
「いえ、そうでもありませんよ?」

よく地図をご覧になってください。
続けると、司馬昭様はじっと見つめる。
ハッと気がついたように顔を上げ、こうだな!と楽しそうに笑う。
はい、よくわかりましたね、続けて、にっこり笑い返した。

「では、今日はこの辺りにしておきましょうか」
「終わりか?」
「はい、先ほどから司馬師様が此方をじっと見つめておりますので、お疲れさまです」
「背後の気配に気がつくか、流石だな」

賈充殿の言葉に苦笑して、これでも護衛ですから、と告げる。
ちなみに身体を動かすのも、以前は司馬師様の訓練の相手だけだったのだが、最近四人でやっている。
何故かわからないが賈充殿が滅茶苦茶な勢いで突っ込んでくることがあり、怖い。
命が狙われているのではないかと、毎回思う。
まだまだ彼には負けられないのだが…危険な場面がちょくちょくある。
恨まれるようなことをしただろうか、と思わないでも無いのだが、別に嫌われている訳でもないらしい。
この間、彼に嫌われた女官との場面を目撃して、私が泣きそうになった。
何あのすごく率直に真っ直ぐで心を抉る発言。

「…外出するぞ、氷雨」
「準備いたします」

司馬師様の隣の部屋にある自分の部屋で鎧を身に着け、自身の身体の凹凸を隠す。
髪の縛り方も首許で一つにするように変えた。
元々、父に似て男らしい顔立ちだ、こうするだけで女だと侮られることは減る。
青い布を肩に巻き付け、左腕を隠すようにする。
その布に双剣を隠し、腰にはヒョウを差した。
すぐに司馬師様の元へ向かう。

「いつもながらに別人のようだな」
「護衛として、侮られるような見た目ではなりませんので」

賈充殿の言葉に無表情のまま返し、主を見た。
彼はこちらをちらりと見て、行くぞ、と踵を返す。
その後ろをついて歩いていくと、厩に到着した。
え、外ってそういう遠駆け的な外かよ。
だったら武器はもう少し大きくてもよかったな、と思いながらも司馬師様の馬と自身の馬を引いた。
白馬に乗った司馬師様は素晴らしく絵になる。
しかも今日のように柔らかな日射しを受けていると一層だ。
睫毛に反射した光が露を溜めたように輝いて、小さく笑む彼は慈愛に満ちているようにさえ見える。
隣の青毛の愛馬に跨がった。
ゆたりと歩かせるようにして、小さく笑う。

「何処まで行かれますか」

私の問いに、彼はふ、と口角を緩めただけだった。
司馬師様が馬を走らせ、私もその後を追い始めたすぐ、だ。

「お待ちください、兄上!氷雨!」
「追うぞ、乗れ」

後ろから声が聞こえ、二頭の馬が追いかけてくる。
…あの二人に乗馬教えたの誰だよ!
司馬師様がどんどん加速していくのを追いかけながら、2人にも意識を向けなくてはならなくなった。

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