鬼神 | ナノ



おめつけ 1/1


満面の笑みを浮かべた司馬昭様が私に抱きついてきた。
姉上ーと謎の声を上げている。
いや、前世とかおぼろげにしか覚えてないけど、弟いなかったと思う。
つまり、そう言う姉上ではないはずなんだ。

「し、司馬昭様?」
「昭!氷雨から離れないか、」
「嫌です、氷雨は俺の理想の姉上なんです。兄上にも渡しません」

ちょ、待て。
どういう展開だ。
理想の姉上とは一体どういうことなのか、と思わないでもないが、まあその辺は置いておこう。
全部拾っていたら多分、話が進まない。

「司馬昭様、これからはお目付役殿が、」
「…氷雨は俺が嫌いか?」
「え、いえ、そのようなことはありませんが、」
「じゃぁ、好きってことだよな!子上って呼んでくれよ、な!」
「…その話は後に回しましょうか。とにかく、今はお目付役殿の話です」

言いながら、司馬昭様の腕から逃げようとするが、力強い。
ちらりと張春華様を見つめるが、生憎と面白そうに笑っている。
強い視線を感じる司馬師様は…怖い。
司馬懿様はもう、関わるつもりさえないらしい。
問題の司馬昭様は折れる気が一切ないようだ。

「……わかりました。護衛の必要がない時は、子上と呼ばせていただきます」
「それ、いつだよ」
「私にはわかりかねます。護衛の必要不必要は、司馬師様の判断によりますので」

告げれば、はあ、とため息を吐きながら離れる司馬昭様。
ホッとしながら距離を置く、と司馬師様に後ろから抱きしめられた。
…どうしてくれようか、この状況。

「氷雨、私のことも子元と」

これで、それは命令ですか?とか聞いたら不味いタイプ?
ないわー、本当にないわー。

「…わかりました、子元様。兎にも角にも、司馬昭様のお目付役の方を、」
「氷雨は可愛いわね、そうは思わない?」

張春華様の声によって、やっと金髪の少女に視線が集まった。
大きな瞳が半眼になっている気がする。
ていうか、司馬師様離してくれないのかな、なんという状況。

「そうですね。王元姫です、よろしくお願いします」

私に視線を向けながらそう告げた。
…よくよく考えれば、同僚的な立場になるのだろうか?
そう思いながら、笑みを浮かべた。

「王元姫殿、こちらこそよろしく頼みます」
「…母上、お目付役が出来た、ということは、氷雨は昭の教師役をやる必要はありませんよね?」

あの、いい加減手を離して頂けないかと。
なんて思いながらも、司馬師様の言葉は確かに気になるところで。
私も視線を向ける。
張春華様は司馬懿様に旦那様、と声をかける。

「暫くはそのまま教えてもらえ。いきなり昭と二人にされても困るだろう」
「暫くは子元、子上、氷雨、元姫殿で行動していなさいな」

にっこり、笑った張春華様の言葉に、すぐに頷いたのは私と王元姫殿の二人だった。

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