鬼神 | ナノ



せつめい 1/1


司馬師様、司馬昭様、賈充殿の三人に妹の面倒を見ることを説明した。
どうして司馬師様だけではいけないのか、と思いもする。
が、司馬昭様の勉強も見ている身だ、適当なことは出来ない。
とはいえ、いつもと何ら変わりなく、妹が追加されるだけなのだろう。
司馬師様に肉まんを差し出した空き時間に、ふと確かめておこうと妹を見た。

「妹、お前はどっちだ?武将か?女官か?」
「母上には、女官と言われました、姉様のように武が優れている訳ではないので」
「私はお前の意見を聞いている」
「…姉上のように、護衛武将になりたいです。護衛女官ではなく」

私をじっと見つめて答えた妹に、なら鍛えるだけ鍛えればいいかとホッとする。
護衛女官になりたい、とか言われたら、教えてくれる女官を探す所から始めないといけなかった。
無理無理、そんな時間ない。

「武器は?」
「一通りです」

その返答に思わず眉を寄せる。
答え方で一通り、ということは、型を全部知っている程度。
得意も苦手の克服もできていないのだろう。
思わず、舌打ちする。

「まだそのレベルか…いや、女官向け、かつ弟もいたからよくそこまで行ったという方か」
「申し訳ありません」
「いや、いい。まずヒョウ、多節鞭、笛、双杖、螳螂鉄糸…あとなんだ、まあいい、軽いのからやるぞ」
「姉様が稽古を付けてくれるんですか?!」
「他に無いだろう、とはいえ、時間は中々取れないからな殺す気で来い」

少し考えるようにしてから、頷いた。
ちゃんとした教え方など、知らないし、実践する気もない。
もちろん、司馬師様や他の方に教えなくてはならない、という場合なら、それも考えるが。
今回は妹だ。
驚いたような司馬昭様の声が聞こえる。

「殺す気って…マジでか」
「その方が本能的に刻み付けられ、何も考えずに身体が動くようになる、と父が」
「それは本当なのか?」

賈充殿の言葉にさぁ?と首を傾げてから、司馬師様の前においてある蒸籠を手に取る。
空になったそれを女官の一人に渡して、すぐに司馬昭様の勉強を見た。

「妹、お前も見ておけ、私はお前に兵法までを丁寧に教えてやるつもりは無い」
「はい、わかっております」
「ていうか、さっきから妹、妹って、名前は?」

司馬昭様の言葉には司馬師様が返す。

「ない。名付けようとは思うなよ」
「司馬師殿は理由を知っていらっしゃるのですか?」

賈充殿が問いかけた。
我が親愛なる主人は、その冷静そうな顔に柔らかな微笑を乗せる。

「氷雨を氷雨と名付けたのは私だからな」

同意を求めるように此方に視線が送られた。
にこり、笑みを浮かべて、頷く。
司馬昭様と賈充殿の驚いた顔が印象的だった。

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