悪魔の寵姫 | ナノ



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ハートの乱舞がうざったい

決勝戦進出が決まった。
が、白秋のマネージャーさんからセナが呼び出されて…。
皆で後をつけた。
と言っても、妖ー兄、クリタン、ムサシャンはいないけど。
だけど、何故か、氷雨さんも用事があるとかで、この場にいない。

「おい、あれ、氷雨さんだよな?」

モンジの言葉に、皆が視線を向ける。
と、そこにいたのは、むすっとした表情だけど、確かに氷雨姐で。
見たことのない、金髪の黒いスーツの人と一緒にいる。
その人と向い合って何やら話をしていた。

「嫌よ」
「だが、そのままではどうにもならないでしょう?」
「それでも、嫌。そもそも、あなたには関係ないわ」
「君が今の状況になっているのは、元を正せば、」
「今は今。別に後悔もなければ不安もないの」

細められた氷雨姐の目は、今まで見たことがないくらいに冷たくて。
それでも、黒スーツの人は、逃げることなく向い合う。

「むしろ、私と関わらない方が良いんじゃないですか?」
「何故、」
「だって、知られたくないでしょ?事故起こしたなんて」

戸籍と医者については感謝してますけど、それだけです。
氷雨姐は立ち上がって、この話は終わりだとでも言いたげだ。
しかし、その手を掴まれて、剣呑な表情を浮かべる。
スーツの人の手をはたき落として、口元だけで笑った。

「話がしたいなら、代理じゃなくて直接来い、って伝えてもらえるかしら?」
「…」
「もう二度と、こんなことで呼ばないで下さいね」

席を離れた氷雨姐はどうやらセナに気がついたらしい。
近寄りながら、どうしたの?と微笑む。
その表情はいつも通りでほっと息を吐いた。
リクリクも集まって、白秋のマネージャーさんも登場した。

「あら、あなたは?」
「初めまして、泥門のお手伝いしてます。氷雨です。此処にいるのは偶然なんですけど」
「そう…氷室丸子、白秋のマネージャーよ」

二人は握手を交わす。
氷雨姐はすぐに、私は飲み物買ってくるから、と離れた。
込んでるから時間掛かりそう、と肩をすくめるのは、きっと、私は聞かない、という意思表示なんだと思う。
直接言わないのが、大人っぽい、と思う私はまだまだ子供なのかもしれない。


映像を見ているセナとリクリクの正面、白秋のマネージャーさんの真後ろに、白秋の二人が現れた。
振り上げられた大きな手は、机を破壊する。
マネージャーさんを抱きしめるように避けたセナに一瞬、胸が苦しくなった。
でも、席の場所を考えると、守らなくちゃ怪我をしてたんだと思う。
そのあと、何か話してから別れた。

「あら、峨王さんに円子さん?」
「氷雨か」

物音に気がついて慌てて走ってきたように見える氷雨姐が立ち止まって、ぱちりと瞬く。

「…泥門の女神様にこんな所で会えるとはねぇ」
「ふふっ、悪魔は神に頼りませんよ」

くすくす、と口元に手を当てながら笑う氷雨姐は首を傾げて、じっと二人を見つめる。
何を言ったのか、全く聞こえなかったが、彼女は口を動かした。

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