悪魔の寵姫 | ナノ



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周囲の糖度をあげないで下さい
謎の氷雨姐人気は、よくわからないまま誤摩化される。
それから、何故かメイド服の二人に挟まれて写真を撮っていた。
終わりまで残り、服を着替える。
疲れたような顔をした氷雨姐は気がついたように、走った。

「雲水さん、お久しぶりです」
「っ…氷雨、さん?」
「はい。あ、この間、雲水さんの携帯から阿含さんが電話をかけてきたんですが、大丈夫ですか?」
「え、あ、大丈夫です」

二人は暫く話をしてから、氷雨姐がぺこりと頭を下げて別れる。
氷雨姐は私のところに来て、じゃぁ先帰っていようか、と笑った。
その表情にこくりと頷いて、先に泥門に帰る。


王城の文化祭から3日後。
私たちは江ノ島フットボールフィールドに立っていた。
雨の中、氷雨姐はいつも通りに、上で撮ってるからと笑う。

「いつも通り、上から見守ってるよ」
「ハッ、女神様は最終決戦まで降りてこねぇってか?」

妖ー兄の言葉に氷雨姐は肩をすくめた。
目を細めて微笑んで、全員を見回す。

「だって、デビルバッツはこんなところで負けないでしょ?」
「…よく言う」

戦うのは氷雨姐じゃないのに、自信満々に微笑んだ。
その顔に後押しされたのか、おう、と頷く皆にもう一度緩やかに笑う。
確かに、氷雨姐は、ベンチにはいない。
一緒に走ったり、ボール投げたりもできない。
それでも、氷雨姐は絶対的な泥門の味方で、観客だ。

「何があっても、私は上から全部見守ってるから」

ただただ、信じて。
最後にそう言って、氷雨姐は観客席に上がっていく。
それしか、撮影することしかできない、と言うけれど。
きっと、その存在が、デビルバッツを支えている部分もあって。
素敵だなと思った。


試合は、泥門が勝利を収めた。
いつもならすぐ降りてくる氷雨さんは、まだ降りてきていない。
ムサシャンは何か知っているようで、肩をすくめていた。
でも、その顔は心配そうだ。

「ケケケ、心配か?」
「どっちかってーと、雨に濡れてないか、だな」

タオルを肩にかけて、観客席に視線を巡らせる。
やっと、いつもの氷雨姐の声が聞こえた。

「みんな、おつかれ、」

振り返った先にいたのは、笑顔だが、全身濡れた状態の氷雨姐。
何故か、鞄と、カメラだけは濡れていない。

「せめてタオルで拭け、」

ムサシャンが自分が持っていたタオルで頭をガシガシと拭き始める。
されるがままに立っている氷雨姐はごめんねぇ、と情けない声を出した。
頼むから、無理はするな、と囁くような声で言っているのが聞こえて、吃驚する。
なんだか踏み込めない雰囲気だ。

「ん、ごめんね、厳くん。ありがとう」

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