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複数と繋がってる暫く話をしながら警戒心を解いていく。
相手のことを聞きながら、褒めるが、どうにも反応が悪い。
このままだと、この女を使ってカス共を苦しめる作戦がパーじゃねぇか。
「そういえば、氷雨ちゃんっていくつなの?」
そういや聞いてなかった、と聞いてみる。
まあ、今までの反応を見て、成人はしていそうだが。
「二十歳です」
「へぇ、そうなんだ?可愛いから、もっと若いかと思った」
ぱちり、瞬いて、へらりと笑う。
そうですか?と首を傾げている様子に、眉を寄せた。
「もしかして、嘘ついた?」
「吐いてませんよ」
にこにこと笑顔を浮かべる彼女に不信感を抱く。
明らかに、可笑しい。
年齢について言われて、あの、“なら、そうなのかもしれない”という反応は異常だ。
そう思って問いかけるが、嘘を吐いているような様子は見られない。
探るように視線を向けたが、ふと気がついたように俺を見て笑う。
「長い時間拘束してしまって、申し訳ありませんでした」
阿含さんのおかげで、薬が効くまで痛みを気にせずにいられました、ありがとうございます。
“大人”としての笑みを浮かべる女。
色気があるとか、大人っぽいとか、そういうのではなく、純然たる大人。
お前は子供だ、と突きつけられた気がして、奥歯を噛み締める。
だが、その隙に立ち上がり、もう一度、ありがとうございましたと頭を下げた。
その顔には既にあの笑顔はなく、そのことに更に怒りを抱く。
大人ではない俺に、対等な顔を見せる気はないのか、と視線を向けた。
きょとん、と首を傾げてから、不思議そうに告げる。
「阿含さんも戻られますか?」
「いや…先に戻りなよ、チームメイトが心配してるんじゃないかな?」
にっこりと笑って、虚勢を張った。
そうですか、では失礼します、と背を向ける。
よくわからない自分に苛々しながら、その背中に視線を向けた。
何故か、王城の進が近づいてくる。
「氷雨さん、」
「進さん?お一人ですか?」
「はい、…一人じゃない方が良かったですか?」
「そんなこと言ってないですよ」
苦笑して、それでも楽しそうな雰囲気が伝わってくる。
進も心無しか表情が柔らかい。
「この間は、すみませんでした」
「桜庭さんに言われました?」
くすくすと笑いながら進を見上げる。
先ほどまで話していたときの笑顔とは異なり、何処か安心している様子が見えた。
目を細めて二人の様子を見据える。
一度だけ、ちらりと進がこちらに視線を向けた。
だが、すぐに興味を失ったように、視線を戻す。
「今度から気をつけてくださいね?」
「はい」
頷いた進は突然、抱き上げた。
された方は驚いたように目を見開き、抗議をする。
抗議を受けても平然とした表情を浮かべ、首を傾げた。
そのまま二人が会場内に消えた。