悪魔の寵姫 | ナノ



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ちょっと、お節介を焼こうか

西部戦は負けてしまった。
でも、鉄馬君のおかげで、3位決定戦には全員で参加することができる。
ホッとしながら、次の王城対盤戸の試合が始まるのを待つ。

「そういえば、氷雨さんとムサシさんって知り合いなんですか?」

セナの言葉に、氷雨さんと武蔵君が視線を交わす。
それから、氷雨さんがにっこり笑って頷いた。
武蔵君もそうだな、と肯定する。

「ヤーなになに、ムサシャンと氷雨姐がどーしたって?」
「どうもしねぇよ、糞チア」

ハイテンションに前髪を動かしていた鈴音ちゃんを銃で押しとどめたヒル魔君。
目を細めて、首を傾げる。
ぷくぅとガムを膨らませて、顎で促した。

「私の命の恩人、ってところでしょうか?」
「で、同時に親父の命の恩人でもあるな」

何でもないことのように笑う二人。
でも、命の恩人、って早々なれるものじゃない。
っていうか、命の危機自体、そもそも訪れる回数が少ない筈。

「なんで、氷雨姐はムサシャンのことだけくん付けなのー?」
「んー、最初はさん付け・敬語だったんですけどね…」

苦笑した氷雨さんは、どうします?と言いたげに武蔵君を見つめた。
肩をすくめた武蔵君が、はぁ、と一度ため息を吐く。
めんどくさそうな顔をして、告げた。

「ウチのやつらが夫婦みてーだって騒ぎ始めたんで、変えてもらった」
「申し訳なさすぎて、思わず土下座しそうになりました」

んなことねーけどな、と武蔵君はあっさり答える。
氷雨さんは眉を下げて、むぅと子供っぽい声を上げた。
その頭をぽんぽん、と撫でているのをみると、多分、さん付けとかが原因だった訳じゃないと思う。
が、まあ、二人が納得しているのならいいのだろう。

「始まるみたいですね」

フィールドに視線を向けた氷雨さんがカメラカメラ、と自分の鞄から取り出した。
ふと、私に気がついて、考え込む。

「妖一さん、私、反対側行ってきますね」
「おー、ちゃんと撮っとけよ」
「はぁい。まもりちゃん、こっち側よろしくお願いします」

笑って、氷雨さんは小走りで人ごみに消えた。


その後、セナたちが突然ビデオを持って走っていったのを見て、慌てて追いかける。
3人とも速くてどうしよう、と視線を泳がせていると、バイクに乗っている氷雨さんと目が合った。
私に気がついたのか、後ろ乗る?と笑う。
頷いて、後ろに乗せてもらって、銭湯に到着する。

「行こ行こ!まも姐も氷雨姐も!」
「え、ちょ、」

少し口元を引きつらせた氷雨さんに首を傾げながら、女湯に入る。
彼女は眉を下げて、気分悪くしたらごめんなさい、と謝りながら脱いだ。
その脇腹に一筋、大きくも濃くもないが、傷痕があった。

「氷雨姐…肌白いね」

その傷痕を見て、余計感じたのだろう。
鈴音ちゃんの言葉に、氷雨さんは照れたように頬をかいた。
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