悪魔の寵姫 | ナノ



05
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好きでなくても触れあえる、好きなのに、
好きだからこそ触れることすらできない

ベン牧場に止まった次の日、インディアンランニングをすることになった。
だが、なんでコスプレしなきゃならねぇんだよ。
もちろん、俺は拒否させてもらったが、目の前でいつもの通りに困った顔をしているのが一人。

「まもりちゃんはズボンなのに、なんで私はミニスカ…」
「似合ってるぞ」
「絶対思ってませんよね、ありがとうございます。…何が嬉しくて太い足を晒さなきゃいけないんですか」

適当すぎる棒読みの礼を言われた。
思わず、ぴくりと口元が引きつるが、ああもう、と言いながら足を隠すものを探している氷雨を見る。
正直、それ程太いとは思わない。
というか、むしろ

「エロくね?あの足」
「あー、それ水着の時も思った。なんつーか、“女の人”って感じだよな」
「本人曰く、枕にするには丁度いいかも、だと」

三兄弟の言葉に動きが止まる。
ちらり、と氷雨に視線を向けた。
何とも言いがたい複雑な表情を浮かべた結果、おもむろにブーツを脱ぎ始める。
隣にいる糞マネに苦笑しながら話しかけた。

「年齢不詳だから…まだ、許されると思います?」
「全然問題ないと思いますけど」

太ももに軽く食い込んでいる長い靴下。
三兄弟の方から、おお、ニーハイと言う声が聞こえた。
ただそれを見ながら、むしろ太く見える?と困ったような声を上げているのがわかる。

「ちょっとした練習を後ろの方で真似してたら、少しは痩せるかな…」
「必要ねーだろ」

ふに、と自分の二の腕を掴んでいる氷雨に声をかけた。
その様子を見るだけで、明らかに柔らかく、肌触りが良さそうだとわかる。
食い入るようにその様子を見つめている三兄弟に発砲しながら、視線を向けた。
俺の視線に気がついたのか、きょとん、といつものように首を傾げる。

「やっぱり必要かも、とか思ってませんか?」
「んなこと思ってねーよ」

ジト目で俺を見てくる氷雨に笑って返して、立ち上がった。
小走りで近寄ってくる様子を視界に入れながら、歩き始める。
さり気なさを装って、口元を隠す。
ふぅ、と小さくため息を吐いて、一度深呼吸した。


「あれ、全員参加ってことになったんですか」
「って、氷雨さん?!」

空港を出た後の糞チビの叫び声に、全員が注目する。
そこにはかなりデカいバイクに乗った氷雨がいた。

「買ったのか?」
「レンタルです、買っても持ち帰るあてないですし」

肩をすくめるその姿に、唖然とした表情が集まる。
ケケケ、と笑って、国際免許は持ってるから安心しろ、と告げた。

「いつ取ったの?」
「妖一さんにお世話になってすぐに二輪免許と大型四輪免許とったんです」

警察の方から渡された戸籍は、一応二十歳ってことになってますから。
綺麗に笑って、氷雨は言う。
まもりちゃん、後ろに乗ってみる?と続けた言葉に、糞マネが嬉しそうに頷いた。
結果、ゴーグルをつけた運転手に糞マネがヘルメットを被って抱きついた2ケツがトラックの隣を走っている。
荷台から横目でその様子を見て、ただ純粋に羨ましいと思った。
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