籠球 | ナノ



2


指をもう一本立てる。
牧君は黙って、私を見た。

「数学フェチ何じゃないかと思うほどの、数学の成績のよさに対する、あの漢文への感情の薄さ。」
「…それはお前基準で考えてるだろう?」

ごもっとも。
私の苦手は数学で、まったくと言っていいほど出来ないが、国語は出来る。
詳しく言えば、古典だけなら全国模試で一点も落とさない。
漢文とか楽しすぎて仕方ない、三国志とか楽しすぎる。
ごほん、ちょっと外れた。
じーっと見てくる牧君に少し、目を反らしながら、更に指を上げる。
少し半笑いで、続けろ、と告げた。

「威圧感半端ないのに、天然てか、子供っぽい。」
「…威圧感、あるか?」
「バスケ部情報ですとも。」

にへら、と笑って返す。
これでも、ちょくちょくバスケ部を見に行っていたりするのだ。
後輩からの意見やらなんやらも、よく耳にする。
むしろ、牧さんに対する何かの相談所と化している。
何でそうなったのは良く分からないが、多分3年間同じクラスだからなんじゃないかなぁ、と思う。
ちなみに、相談内容で一番多いのは、牧さん怖いッす、どうすればあんなに普通に喋れるんですか、である。
毎回、え…案外天然だよ、今度、部活以外で同級生と話してるの見てみなよ、と答えることにしている。

「天然、か?」
「うん、どう考えても天然。間違いなく天然。」

む、と眉を寄せる彼だが、事実天然なのだ。
つーか、子供っぽいの方はいいんだ…自覚済みってこと?
何か言いたそうな表情なのを目に入れながら、笑い、指を増やす。
これでパーの状態になった。
まだあるのか、と彼が小さく呟いた。

「格好いいのに誰にでも優しいので、個人的にすごい困る。」
「…は?」
「ああ、違う。誰にでも優しいからこそ、よく話しかけてくれることに勘違いしそうになって困る。」

にっこり、笑って、鞄を持った。
ぽかんとしている牧君にじゃぁね、と声をかける。
ちょっと、待て、という声と、机や椅子のがたごと、という音が混ざり、教室から響いた。
小走りになって、廊下を進み、それから、靴を履き替える。
昇降口から出て、ちら、と後ろを見る。
彼がいないことにほっとしたような、残念なような気持ちを持ちながら、校庭に出た。
ちなみにうちの学校は一度校庭に出ないと校門にいけないつくりになっている。

「白雲氷雨!」

上からフルネームで名前を呼ばれて、びっくりして見上げる。
クラスのベランダのところに牧君が立っていた。

「俺は、お前が好きだ!」

とりあえず、校庭中の視線が集まったので、この天然!と叫んで逃げ帰ったのは言うまでもない。

[前へ][次へ]

[ back to menu ][back to main ]


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -