籠球 | ナノ



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ウキウキと楽しそうに私の正面に座る男は、いつもの数倍緩んだ顔でねぇねぇ、と話しかけてくる。

「何?」
「氷雨ちゃん、今日は七夕だよね?」
「まあ、7月7日ではあるね。」

あっさりと言い放ったにも拘らず、彼は楽しそうにでしょー、と話を続けた。
この喫茶店はカップル割りとやらをやっているらしく、特に今日は七夕だから、という理由で特別スイーツもあるらしい。
…私が席を立たない理由はそれだ。
限定スイーツ、毎年この店では出しているらしいが、かなり美味しいらしい。
さっき隣のテーブルの女の子が言っていたことなので、何処まで信用できるのかはわからないが。

「恋人の日じゃん?」
「そうとも言い切れないが、世間一般ではそう認識されているな。」
「一年に一回のデートだよ?」
「見方によっては0.3秒に一度だったか?」

確かテレビで言っていた。
と、切り捨てれば、驚いたように瞬く仙道。
丁度、限定スイーツが運ばれて来て、私の視線はそちらに釘付けになる。
キラキラと光るアクアブルーのゼリーがメインで、その上にホイップクリームで綺麗な波が描かれている。
織姫と彦星はフルーツで作られていて、可愛らしい。
意図せず、口元が緩む。

「喜んでもらえた?」

その声にはっと気がついて、表情を戻した。
目の前で楽しそうに笑う男にいら、としたがこのゼリーの前ではどうでも良いことだ。
まぁな、と小さく言ってから、食べても良い?と首を傾げた。

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