籠球 | ナノ



冷めた視点とロマンチスト


冷めた視点とロマンチスト

「氷雨ちゃーん。」

後ろから叫ばれた自分の名前に眉を寄せる。
そして、何事も無かったかのように足を進めた。
ちょっと、待ってよ!と後ろから声が聞こえるが知るものか。
土曜日の町中で後ろから名前を叫ばれて振り返りたくはない。
名前を呼んでくる声の持ち主がアイツであるなら尚更。

「氷雨ちゃん、やっとおいついた。」
「放せ、仙道。」

掴まれた肩にため息を吐きたくなるが、ぐっと堪えて振り返った。
ニコニコといつも通り能天気な表情を浮かべるクラスメイトに重いため息を吐きながら、何?と聞く。
彼は嬉しそうに笑って、私の手を取り、歩き出す。

「ちょ、」
「凄いお店見つけたんだ、行こう?」

誰かコイツを止めてくれ。
越野、越野はいないのか。
これは、電車の中で急病人が出た時位の非常事態だ。
お客様の中に越野様はいらっしゃいませんか?!
なんて、思考を暴走させながら、さり気なく手を引き抜こうとしている。
のだが、かなりしっかりと握り込まれており、私の力では抜けそうもない。
その間にも目立つツンツン頭の長身は嬉しそうにだらしなく緩んだ表情で街を闊歩する。
数分歩いた所で、彼は立ち止まり、私に向き直った。

「さ、行こうか。」

私は、はぁ、と今日何度目かになるため息を吐いた。

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