吸血鬼 | ナノ



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『親愛なる兄上へ
 OPの世界…え?ちゃんと言わなくちゃわかんない?だって版権はやばい。
 とりあえず、海賊たちが海賊王を目指し冒険するお話の世界にいるよ。
 …今馬鹿かコイツって思ったでしょ?ふざけんな、事実だから。
 手紙持った子たちが証言してくれるよ。口に刀咥える剣士がいるとかね?
 あと、私は還れません。残念だけども、記憶がなくなったりとかってサービス
 はないからー、安心して私を覚えているがいいよ。あと、人間卒業しました。
 それは、一緒につけた写真を見てね☆
 そうそう、手紙を持ってってくれた子たちは未来ある若者です、落ち込ませて
 使い物にならないなんてことしないでよね?還した意味が無くなる。実は一人
 の女の子に巻き込まれたので、彼女たちも立派な被害者なんだよ、世の中には
 本物の電波で厨二な人間がいるものだね、私なんかじゃ足元にも及ばない…』

そこまで読んで、唖然とした。
お別れの手紙とは思えないそれに思わず彼女のお兄さんを見る。
苦笑したお兄さんは頭をかきながら、いや、でも無事だってわかってよかったよ。
と安心を滲ませた。
ふと、お母さんが呟く。

「まあ、元から二次元に夢中な子だったし、これで彼氏でも出来るかしら?」

首を傾げ、誰へともなく呟くその様子に思わず吹き出す。
泣いていたのに、笑っているウチがいるのは、やっぱり、ヒサメさんのおかげだ。

「あ、それなら問題なさそうです。ヒサメさんモテモテでした。」

ランが笑顔で言う。
まあ、確かに、逆ハーとやらを望んでたらしいナコの対象外は彼女に惚れてた。
対象が何となくおかしな動きをしていたときもあった。
ナコは気がついてなかったし、ヒサメさんは全くそんな気持ちはなかったっぽいけど。


わたしの言葉にぽかんとしたのはお母さんで、むっとしたのがお兄さん。
ちなみに、お父さんはまだ仕事らしい。
休みたかったが、そうも行かない地位におられるとか。

「本当?ねえ、どんな人?確か、氷雨がキャラクターの本持ってたわよね!」

突然キラキラと目を輝かせたお母さんは何処に仕舞ったかしら?と何処かへ向かった。
残されたわたしたちとお兄さんはその姿を見送る。
お兄さんははあ、とため息を吐いて、騒がしくてごめんね、と笑った。
ヒサメさんとは顔立ちはあまり似ていないが喋り方と雰囲気がよく似ている。

「親孝行ってか、家族に気ぃつかってた氷雨が、唯一してないのが恋人連れて来て安心させるってやつでね。」
「え?そうなんですか?」
「ああ、俺の誕生日とか毎年祝ってくれてたけど、恋人の話は俺もあんま聞かなかったし。」

まあ、短期間ではいたんだけどな。
苦笑した彼は、とても大人びていた。
それにしてもモテるのか…いや、告白された話は聞いたことはあるが…。
と難しい顔をしてお兄さんは呟く。
そのとき、お母さんが帰ってくる。
手には言った通りにキャラクターブック。
ホントに見つけて来たんだ…。
お母さんはウキウキとしたようにそれを開いた。

「で、どれ?」

楽しそうに笑う彼女に、わたしたちも少し前のめりになって、最初のページから見て行く。

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