吸血鬼 | ナノ



始まりと終わり


始まりと終わり

私たちは彼女に生かされ、そして、世界に戻してもらった。
その事実に気がつき、涙を流しながら数日過ごして。
気分転換でもしよう、とつけたリビングのテレビが光る。
流れるニュースには一人の女性が行方不明になったと報道されていた。
表示されている写真は日本人的な色合いをしている、彼女で。
思わず、声を上げた。
いつか聞かせてもらった、大好きなお兄さん。
心から信頼していたという親友さん。
親孝行はあんまできなかったけど、仲良くしていて欲しいと願っていた、ご両親。
それから、世界との大切な繋がり。
全てを失ってまで、彼女は私たちを還してくれた。
その事実に堪えきれない嗚咽が漏れる。
ふと思い出して、彼女から預かった手紙を見た。
私たち3人に出来ればでいいから彼女の大切な人たちに渡して欲しいと手渡されたそれ。
彼女の住んでいた場所をしっかりメモして、私はその場所へ向かった。

「ーーにお住まいだった、白雲氷雨さんはーーー。」

彼女は、ヒサメさん。
私の命の恩人だ。


彼女のお家に着いたそこには、数人の報道陣がいた。
それから、彼方で一緒に苦労した2人も。
ああ、ウチの妄想じゃない。
思わず泣きそうになりながら、裏口からお邪魔する。
迎えてくれたのは、涙に暮れる、お母さん。
それから、彼女を支えるようにするお兄さん。
のどが、からからにかわく。
声が出なくて、突き出すように預かった手紙を差し出した。

「こ、れ…は、3人ともあがってくれるかな?」

驚愕の顔をしたお兄さんはそのままウチらを家に上げてくれる。
スズが、決意したように口にした。

「私たち、ヒサメさんに助けて、貰ったんです。」
「詳しく聞いてもいいかな?」

優しげに首を傾げるお兄さんは彼女の言っていた印象とは違うけど。
彼女にはよく似ていた。

「神隠しに、会ったんです。それで、ヒサメさんが、自分が還らないかわりに、私たちを、」

思わず、といったようにぼろぼろと涙をこぼすスズ。
ランは最初から大泣きしている。
ウチも目頭が熱くて、涙をこらえきれない。
ののしられても可笑しくないってわかってた。
だから、お兄さんやお母さんの顔を見られないでいる。

「そっか、君たちの方が若いし、うちは俺がいるもんな。」

苦笑するように言ったお兄さんに吃驚して、思わず顔を見た。
彼は自分宛の手紙を開いて、読んでいた。
読んでくごとにため息を吐いて、アイツ馬鹿だろ、と額に手を当てる。

「ほら。」

彼は母親宛の手紙をお母さんに渡した。
彼女は読んで行くうちに全くこの子は、と呆れたように泣く。
読んでみる?と渡されたそれに目を通した。

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