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■□サプライズ!

─12月25日ハ、キリストノ生誕ヲ祝ウ日、ソシテ前日24日ハ日没後ニイブト呼バレマス、コノ日カラ、翌日ニカケテ家庭ヤ、カップルデ皆思イ思イノ時間ヲ過ゴシタリ、パーティーヲ行イ、楽シムノデス─

12月24日、サイバトロン基地。テレトラン1がクリスマスの説明を交え映像を流すと、メインルームに集まっている仲間たちはみな興味津々の様子。

今年はレインが来て初めてのクリスマスだ。
自分たちなりの方法で、何とかレイン達人間の世界のクリスマスをかたちにしたいが、方法が分からない。地球に降り立って何年も経つが、クリスマスの存在はなんとなく知っていたものの、毎年スパイクとカーリーが持ってくるパーティーの写真を見るだけだった。
休暇も取らずに皆に付きっきりのレインに、少しでもクリスマス気分を味わって楽しんでもらうにはどうしたらよいのか、ということをコンボイは必死で考えていた。
その結果、一人で考えるより皆で考えたほうが「いい考え」になる気がして、今ここで、皆にクリスマスの存在を教えることから始めていたのだ。

『直接レインに聞いてどんなパーティーをするのか聞いた方がいいんじゃないのか?』

サンストリーカーが腕組みをして、なぁそう思わねえか、とランボルに話を振った。

『ああ、だがそれじゃサプライズにならないしなあ』

ランボルがうーん、と言いながら言葉を返す。今回のポイントはまさにそこだった。

『とにかく基地を飾り、レインがアッと驚く演出がしたい。日ごろ頑張ってくれている感謝の気持ちをこめてだ』

コンボイは仲間を一人一人眺めて、そう言った。
レインは今、事情を知るラチェットとともにリペアルームの器具調整をしている。リペアルームの通信機は予めラチェットがオフにしてくれているので、メインルームに集まった皆はそれぞれの意見をぶつけ合っていた。

『でもコンボイ司令、俺たちはこの地球にきて何万アストロ秒もたちますが一度としてクリスマスパーティーをしたことがないんですよ?』

チャージャーが手を挙げてコンボイに意見を言う。そばにいたゴングも、腕組みをしてうんうん、と頷いた。

『だがやっぱりこのまま何もせずに過ごすのは、人間であるレインは寂しいんじゃないかな?』

今度はストリークが意見をあげた。
マイスターが、それじゃあ、と言って明るく人差し指を立てた。

『まずレインに見つからないように装飾を買いに行かなくてはなりませんね。ツリーを切ってきて、それらしく装飾するんです』
『そうか、いいぞマイスター!』

コンボイが賛同した。皆も、口々にそうだ、それがいいと声を合わせた。

『じゃあ買い物は俺が行きます司令官!!』

アイアンハイドが名乗りをあげる。隣にいたクリフも、

『じゃあ俺も行くよ』

と言うか言わないかのうちにビークルモードへとトランスフォームした。

『じゃあ飾る間の時間稼ぎに、誰かがその間にレインを連れ出さなければならないな…よしバンブル、レインを外に連れ出し時間を稼いでくれ』

バンブルが合点!と敬礼をしたあと、

『あ!!』

と何かを思い出したように敬礼した手をそのまま頭に乗せた。

『どうした』

コンボイが様子が変なバンブルに問いかけた。

『本当にごめんなさいコンボイ司令官、おいら今日ワニータちゃんとデートなんですー』

わぁぉ、とホイルジャックがびっくりして声を上げた。

『そうか、残念だな。じゃあ…』

コンボイが見回すと、プロールが手を挙げた。

『あ、司令官意見を』
『どうしたプロール』

コンボイが促すとプロールは、

『せっかくなのでツリーを大きいものにしてみては?』

と提案した。

『迫力が出ますもんなぁ』

ホイルジャックが賛同した。

『そうなってくると、やはりツリーを切ってきて運ぶのは司令官のようなトレーラーのあるトラックが一番いいんじゃないでしょうか?』

プロールが続ける。

『レインは司令官が連れ出してもらって、クリスマスの準備を今からするんだ、と思いこませておき、その間に我々が基地の装飾を済ませれば帰ってきたレインは驚くんじゃないでしょうか?』
『そりゃいい!うまくいくかもなあ』

マイスターが賛同した。コンボイも頷き、

『どうやら一番それがいい方法かもしれないな。よしわかった。レインには、ツリーを選ぶ手伝いをしてもらうことにしよう。では皆宜しく頼む』

コンボイがラチェットへ回線を開く。

ほどなくして、レインがリペアルームから走ってきた。

「クリスマスツリーを切りに行くって、本当ですか!?」

目を輝かせて現れたレインに、皆の表情が綻ぶ。

『ああ本当だともレイン。君の好きなツリーを選んでおいで、だが我々も見て楽しめるような大きいやつを頼むよ』

マイスターがレインの肩にぽん、と手を置いて優しく言った。

「はい!任せてください!帰ってきたらみんなで飾りを買ってきて飾り付けしようね!」

そう言うなりコンボイに乗り込んだレインは、楽しそうに手を振って基地を後にした。

『よーし、じゃあみんな…』

マイスターが解散をかけようとしたとき、プロールがそれを制止させた。

『ちょっと待った』
『どうしたんだよプロール?』

やる気満々だったサンストリーカーが、その出足を挫かれて些か腹が立ったような口調で言った。

『ああ。みんな承知の通り、今から準備をするわけなんだが、あの奥手なレインが、木を切りに行く間に自分の気持ちを言えると思うかい?』

この誇り高き正義の戦士達の司令官に、レインは仲間だという想い以上の何かを持っているにも関わらず、未だに想いを伝えていない。皆はそのレインの気持ちに薄々感づいていて、なかなか進展しない二人をもどかしく思っていた。唯一気づいていないのは、サイバトロンきっての天然キャラである当の本人、コンボイだけだ。

『…まあ、無理だろうね。今までがこれだもんなぁ』

マイスターが答えた。

『そこでだ。この基地を、帰ってきた二人がデートを楽しめるように装飾したい』

プロールが人差し指を立てて皆に提案する。

『それ、いい考えだな!』

ストリークが賛同した。

『よし、じゃあいっちょ俺も協力するよ!イルミネーションのホログラムなんて朝飯前!!』

ハウンドが自信をもって名乗りをあげる。

『よし!じゃあハウンドにはデートのルートと、イルミネーションのホログラムをお願いしよう。ホイルジャックは基地内の電気回路のコントロールをお願い出来るかい?』

プロールの問いにホイルジャックが答えた。

『よっしゃまかせなさい!!』

それまで黙っていたブロードキャストが手を挙げた。

『ハイ!ハイ!ロマンティックなムードを出すBGMなら俺っちにお任せを』
『おいおい、お前さんムードを作るのは結構だが音量を考えるんだぞ』

作業を終えたラチェットがリペアルームからメインルームへ戻ってきた瞬間、ブロードキャストに水をさした。

『よし、じゃあみんな準備にかかろう!!サイバトロン戦士、準備開始!』

マイスターが皆に解散をかけた。








『どのくらい大きいのがいいんだ?』

コンボイがもみの木を優しくたたいて回りながら、尋ねてくる。

「司令官の背丈でも、見て楽しめるような高さのやつがいいですね」

のどかな何もない山道で、いきなり出来た二人きりの時間に戸惑う。

『…休暇を取らなくて大丈夫なのか』

そうしたら、あなたに会えなくなる。

「休んでいてもどこにいても、またみんなが怪我してるんじゃないかって心配になりますから」

コンボイは木に向けていた視線を、こちらに移した。

「…みんなお構いなしに怪我して帰ってきますからね。とくに司令官とか」

少し意地悪な笑みを作り歩み寄り顔を覗き込めば、青く光るアイセンサーが戸惑ったようにチカチカ揺れた。

『…レイン、だんだんラチェットに似てきたな』

一瞬空白の時間があり、同時に笑い合った。
冗談ですよ、と笑いながら付け加えた。

『君には本当に感謝しきれない。いつもありがとう。君がいてくれて良かった。皆そう思っている』

声を出して笑うのを止めて、微笑み返した。そう言ってくれるのが、何より嬉しい。
だからこの先なんて望めない。一緒にこうして過ごせる事が、何よりも幸せだと思った。
木に目を移す。コンボイと同じくらいの背丈の、大きな木だった。

「あ、この木にしましょうか」

木を見上げて提案すると、コンボイはぽん、と手を乗せて頷いた。








サイバトロン基地に帰り着いたコンボイとレインは、基地の照明が切れている事に気がつく。二人は切ってきたツリーを入口に置いて、メインルームへと走る。

「な、どうしちゃったの!?真っ暗だけど!!みんなは!?」

心配したレインが、いてもたってもいられず走り出す。

コンボイも、計画とは食い違った静まり返った基地に戸惑った。計画では、帰ってきたらクリスマスの装飾でキラキラしている通路を、レインが驚き喜びながら歩く筈だったのに。



入口のカメラが二人を捉えたので、それぞれのラボに隠れている仲間たちは計画を実行に移した。口火を切ったのはマイスター。

『入口3ー1、点灯開始!ハウンド宜しく!』
『了解、副官!』

レインが暗闇を走っていると突然、基地の通路の壁全てが、たくさんの色に染まって光り出した。サイドには、サンタクロースの小さな飾りが揺れていて、トナカイが空を駈けていくイルミネーションに変わっていき、輝いた。

レインはうわぁっ、と感嘆の声をあげ、両頬を両手で包んだ。

『驚いたかな?』

コンボイの穏やかなこの言葉に、レインはこれが計画されたものなのだと分かり、余計に感動した。

「でも…これ…どうして」
『みんなで考えて、こうしようと計画したんだ。レインが喜んでくれると思ってな』

コンボイがそう言ってレインの肩に手を置く。

『だが協力してくれた仲間が一向に出てこないな。おい、みんな出てきてくれ』






─返事はない。


「?」
『うむ、何かおかしいな』

コンボイがそう言うと同時に、また基地内の電気がシャットダウンされた。
あたりがまた暗闇に包まれる。

『何事だ!!』

一瞬で暗闇に変わった事に目が慣れず、走り出したコンボイのガシャガシャという足音が聞こえたけれど、彼の姿を捉えることが出来ない。

「あ、待って司令官…」

足音が遠くなっていき、暗闇の中に取り残され、一気に心細くなり闇雲に足音のする方へ走り出した。
だが、案の定、転けた。

「きゃあーっ」

コンボイが引き返してきた。

『大丈夫か?』

起き上がったが、今度は片膝をついたコンボイの固い脚にコンッ!!と派手な音を立てて額をぶつけた。

「あうっ!!」
『……人間は本当に暗闇がダメなんだな』

少しあきれ気味のコンボイに、額をさすりながら涙目で答える。

「ひとりにしないでくださいよー!!」
『ああ…すまない』

コンボイが人型にトランスフォームし、手を引かれる。

『これで文句はないだろう?』
「…………」

あまりにも突然の出来事で声も出なかった。

『よし、では行こう。とにかくこんな事態に陥っていることは知らずに皆遠隔操作をしているはずだ。まずはその部屋を探さなくては』

コンボイがそう言うのも耳に入らず、ただただ今起こっているこの不幸中の幸いを噛み締めながら、握られて引っ張られた手を見つめた。

初めて握る司令官の手は温かくて心地いいと思った。







二人が気づくはずもないが、二人のそばにいるリジェがマイスターに通信を入れる。

─こちらリジェ、今司令官とレインはメインルームに続く通路を歩いています。司令官の通信機に今細工しました。これで傍受されることはありません。あ、それから朗報!さっき手を繋ぎました!!次の計画を宜しくお願いします!以上!─



『む?』
「え?」
『今仲間の信号のようなものをセンサーが捉えたようなのだが…』

レインが自身の腕の通信機を見つめる。

「私の通信機は反応していませんけど…」
『おかしいな…まあいい、先を急ごう』



─こちらマイスター、了解した!だが司令官の回路は我々よりもキャッチする機能が高いものだ。トレイルブレイカー、フォースバリアーを通路にかけてくれ。司令官の信号キャッチ機能を完璧にシャットダウンする!─

別室にいるトレイルブレイカーが返事を返す。

─了解、マイスター副官!!フォースバリアー!!─



トレイルブレイカーのフォースバリアーで、完璧に通信機能がシャットダウンされ、とうとうコンボイは何も捉える事ができなくなった。

『うむ…とにかく先を急ごう、さっきから同じところをグルグル回っている気がするが』
「しかも、聞こえますか?なんか曲流れてません?」

さっきから流れている曲は、「ラストクリスマス」だ。

『ああ、その騒音はブロードキャストだろう。演出のつもりかもしれんが、イルミネーションもないのに不似合いだな』

周りを取り囲むサンタクロースの小さなキャンドルが、通路の橋に並んで淡くオレンジに光っている以外は暗闇で、相変わらず視界は悪い。

だがレインは幸せに感じた。イルミネーションがなくたって、光をたたえたサンタクロースのキャンドルは、とてもロマンチックだと思ったし、何よりも、つないだ手を離してほしくなかった。

「司令官」
『ん?』
「ゆっくり歩きましょう、なんだか目も慣れてきましたし」

レインが微笑んだのが、柔らかい光と重なって見え、やけに綺麗だった。

『参ったな…』

二人はサンタクロースのキャンドルが並ぶ道なりに歩きながら、お互いの話をした。







「───こちらカーリーよ。マイスター聞こえるかしら」

マイスターの元へ、カーリーから通信が入る。

『ああ、よく聞こえてるよカーリー!』
「───レインのお部屋の飾り付けは終わったわ。ムードたっぷりに仕上がったわよ!!私とスパイクは裏口を使って出るから、もう解放してあげていいと思うわ!」
『───了解!!ありがとうカーリー、スパイク!ハウンド、キャンドルのホログラムをレインの部屋の方向へ差し替えてくれ』
『───了解!』







しばらく歩くと、通路は見慣れたスライドドアに続く。

「司令官!!」
『うむ、誰かのラボだな。とにかく入ってみよう』

スライドドアを開けると、可愛い沢山の装飾に彩られた部屋へたどり着いた。

「こ、これ……!!私の…部屋…?」
『おお、綺麗だな』

部屋の入口で感激して、思わず涙ぐむ。

「あ、ありがとうございます、なんていうか私、すいません…」

装飾をひとしきり眺め、感嘆のため息をもらしたあとコンボイを見る。
彼も微笑んでいた。







─そんじゃま、最後の総仕上げしますよーマイスター副官─

ホイルジャックが通信すると、基地内の全てのスライドドアにガシャン!!とロックがかかる。

「え?何の音?」

レインがきょとんとしてコンボイを見つめる。コンボイは、まさか、と言ってスライドドアのボタンを押した。
びくともしない。


『こちらコンボイ、頼む、誰か受信してくれ』
『───こちらホイルジャッ…、コンボイ司…官、どうしたんで…か?』

ちょっと間の抜けたホイルジャックの声がコンボイの通信機能から途切れ途切れで聞こえてくる。

『おお、ホイルジャック!どうも基地がおかしい、ドアにロックがかかってしまったのだ』

レインは心配そうにコンボイを見つめて、黙って通信を聞いている。

『───いやはや、わが輩にも何が何だが…イルミネーションの接触が悪かったのか電気回路がいかれとるんですよ、…今調整してるとこなんですがね、ちょーっとお待ちを』

すっとぼけたホイルジャックの名演技に基地内の仲間たちは皆吹き出した。

『そうか、全力を尽くしてくれ。私は今レインの部屋にいる。復旧したらまた連絡を』
『───分かりました!!』



コンボイはレインを見やり、それからソファーに腰掛けた。

『…参ったな』

レインも困ったように微笑んだ。







一番近くにいるのにとても遠くにいるように感じる、コンボイとは、いつもそんな距離感があった。

「司令官、私…」
『こっちへ来なさい』

穏やかな声がした。
歩み寄り、隣に腰掛ける。

『まあ』
「?」
『こうやって堂々と一緒に居られるなら、ラッキーか』
「え?」

微笑んだコンボイの顔が近づいてきて、耳に直接響く絶え間ない電子音に胸を押しつぶされそうになりながら、瞳を閉じてみる。

優しいキスは、彼がくれた最初の、クリスマスプレゼント。

唇を離して、意識が飛びそうになる顔を見つめられる。

『嫌なら言ってくれ』

それ、する前にいう言葉だと思います、司令官。

そう思いながらも、破裂しそうな胸を抑えながら、微笑んで、首を振る。
安心したようにもう一度コンボイは、キスを落とした。

抱き寄せられた腕の中で、キスをされながら目を開けたら視界には、部屋中の飾りつけが入ってくる。

涙がたくさん出てきた。みんなの優しさに。

そして、彼の温かさに。

来年も再来年も、こうして此処でクリスマスを迎えられたらいいと願いながら、抱き締められた彼の胸に身をゆだねた。

2008/12/21
企画/Xmas 7days

みんなに祝福される、というご意見を入れさせていただきました。