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■いのり

12月、サイバトロン基地、メインルーム。コンボイ司令官を中心に、トランスフォーマー達がメインコンピューターであるテレトラン1を囲んでいる。

『─と、いうわけで今年も我が輩の最高傑作、ダイノボット達の訓練、そして新しい機能を取り付けるべく、恐竜達の観察と研究の為にダイノボットアイランドに臨時の基地を構えた』

ホイルジャックが自信満々にテレトラン1を指差す。映し出されているのは、手つかずの自然に溢れ、今でも恐竜達が生息する島。

「凄い!!映画みたい!」

レインの目はテレトラン1に釘付けになった。

『毎年のように気温が低くなる季節になると、ダイノボットを遠征に向かわせるのさ、一週間ほどだけどね。まあ、遠征といっても戦闘訓練だから、そこに映っている恐竜達を殺したりはしない』

ラチェットが補足した。

『それで、今年の"当番"だが…』

コンボイが口を開くと、皆が目を逸らし、なんともいえない表情をした。

「当番?」
『どんなかわいこちゃんに頼まれたって、おいら二度といかないね』

バンブルが沈黙を破って訴える。

「行かないってどこに?」
『ダイノボットアイランドさ。常夏の島だが何せこのダイノボット達の原型がうようよしているからね、ダイノボット達だけ向かわせても、観察と研究が出来ないから、何人かついて行くのさ』

近くにいたランボルが答えた。

『バンブルは偵察の時にひどいめにあったからねん、おれっちが助けたからよかったけど〜』

パワーグライドが得意気に付け足す。

『俺スワープ!早く行く!今年もこのきせつきたうれしい!やっほ〜!!』
『俺スラージも早くひろい場所行きたい』

ダイノボット達は待ちきれない様子。

『私は今年こそあの島の地質の研究を終わらせたいので、今年も行きます』

ビーチコンバーが穏やかにコンボイに提案した。

『もちろん我が輩も今年も行きますよー!』

ホイルジャックも手を挙げた。

『よし、決まったな。ではホイルジャックとビーチコンバー、たのん…』
「はい!!司令官私も行きます!」

コンボイの言葉を遮ったこの一際明るい声に、その場にいた誰もが驚いた。

『本ー気かねレインくん』

ホイルジャックがレインを見る。

「補修員が必要ですよね、私がついて行きます!!」

レインがわくわくしながらコンボイを見た。

『うむ…』
「こんなに寒い時期に常夏の島へ行けるなんて!」

もう行く気満々のレインにコンボイが水を注す。

『意欲的なのは結構だが、遊びに行くわけではないんだぞ』
「わ、分かってますよ!」

レインが焦って答えた。

『レイン、君があそこへ行くのは危険だと思うけどね』

マイスターも口を挟んだ。

「でも基地もあるし、何よりダイノボットも居てくれますし、ご迷惑はお掛けしませんから!」
『確かにダイノボットはレインにはよくなついているからな…よし、許可する。ただし危険性が高いと通信中に判断した場合、直ちに帰還させる。それでいいかね?』

コンボイがレインを覗き込んだ。

『俺グリムロック!!レイン、俺たちダイノボットいるから大丈夫!!』

横からグリムロックが付け足した。
レインがグリムロックに微笑みを返した。




『そんじゃツアーガイドはこのパワーグライドにおまかせを!』

レインがパワーグライドに乗り込む。

『気を付けてな』
「はーい!行ってきます!みんな、よいクリスマスを!」

レインがパワーグライドから手を降って基地の仲間に手を振った。




『…行っちゃったなぁ、レイン』
『寂しいですね』
『せっかく、今年のクリスマスはレインと楽しく過ごせると思ったのになぁ』
『今回はダイノボットに譲るしかないみたいだな』
『いやぁ残念。さあ諸君、メンテナンスの時間だ。基地に戻ろう』








辿り着いた、ダイノボットアイランドと彼らが名付けたこの島は、その存在が知られた今でも、どの国にも属さない、野生種の島だった。火山、石油の池、そして、沢山の恐竜達。

『レイン、メンテナンスを済ませたらダイノボットを連れて好きなだけ島を見てきなさい、夜は危ないんでね、見たい物は昼間に見ておくんだよ』

ホイルジャックが促した。手慣れた手付きで早速研究を再開したビーチコンバーも、それに賛同し、

『くれぐれもダイノボットと離れないように自然を見て回るんだよ。何かあったらすぐ通信機を使ってくれ』

と言った。
微笑んでレインが頷いた。

『俺スワープ、レイン早くいこ!』
『俺スラッグはやくけんかしたい!』
「うん、行こう行こう!」








『俺グリムロック、ではまいとし恒例の、ダイノボットのテストはじめる!!』

グリムロックが号令を出す。ダイノボットみんなが岩に向かって射撃する。

「すごい!上手だねみんな!!」

間髪入れずにグリムロックが判断する。

『いいや、だめ。まだまだひどい射撃』
「そ、そうなの?」


沢山の背の高い植物を掻き分けながら、沢山の恐竜の写真を撮り、ダイノボットの訓練に1日付き合った。
目の前の湖のほとりでは、スラッグとスナールがロボットモードで取っ組み合いをしている。


『レイン』

そばにいたグリムロックがレインに声をかけた。

「ん?」

にっこり笑って振り向いたレインは、グリムロックに答えた。

『俺グリムロック、ここきたらいつも、わが家に帰った気分になる、なぜかわからないけど』
「そっかあ」
『レイン』
「うん?」
『俺グリムロック、レインをここ連れてこれた、とてもうれしい』

レインが微笑む。

「うん、ダイノボットのみんな、凄く楽しそうで私も嬉しい!素敵な故郷だね」

グリムロックが首を傾げる。

『こきょう。なんだそれ、俺グリムロックわからない』

レインがグリムロックの装甲を撫でて話す。

「わが家だと思う場所の事だよ」
『こきょう』


空は、夕焼けに染まる。
12月の下旬にこんなに素敵な夕焼けを見れるなんて。

「…来て良かった」

レインの空を見上げる横顔を、グリムロックは眺める。

『ア゛』
「え?」

ポシュッ、と音とともに、雨が降り出した。

『俺グリムロック、これきっと雨』
「やだ、スコール?みんな、戻ろう基地に!!」

レインをグリムロックが掴んで走り出す。
他のダイノボット達も、続いて走り出した。

基地に戻る。

走りながら、グリムロックがレインに話しかけた。

『俺グリムロック、願い届いた、あめふった』
「え?」
『レイン、夜基地抜けて外にでろ。俺グリムロックみせたいものできた』

唐突なグリムロックの提案に、レインは戸惑ったものの、快く頷いた。






夜、皆がスリープモードへ入る頃、レインは基地のラボを抜け出した。

「グリムロック、見せたいものって?」

月明かりに照らされたレインの顔をただじっと見て、グリムロックは答えた。

『ここにはない、だから歩く。レイン、手に乗るといい』

手に乗ったレインは、先程のスコールの滴が残る、島の植物を眺めながら、グリムロックに連れられて月明かりの中を移動した。

小高い岬にたどり着く。

「ここ?」

手に乗ったまま、レインがグリムロックに尋ねた。

『俺グリムロック、まいとし、ここくる』

レインは、水平線の向こうに視線を向けたグリムロックを見つめた。

『ここ、俺グリムロックの秘密の場所』
「いいの?私来ちゃって…」

グリムロックは、レインに視線を移した。

『俺グリムロック、他のみんなより頭悪い』
「?」
『だから祈る』

水平線へ視線を戻したグリムロックは、話を続ける。

『俺グリムロック、レインにはいちばん、いちばん笑ってほしい。レインが泣く、俺もかなしい』
「グリムロック…」
『だから祈る、ここ一番きっと神様ちかい島!だからいつもあったかい』

レインはグリムロックの話を聞き、微笑みながら、乗り上げた手のひらを撫でた。

『俺グリムロックが一番願ったとき、今日はクリスマスだから、きっとサンタクロースの神様きいてる!』
「サンタクロースの神様?」

レインが目を見開いて尋ねる。
けれど、グリムロックは覚えてきた言葉を忘れないうちに、必死でとなえた。

『俺グリムロック戦う、レイン、守る。レイン、戦う俺たち治す。そうやって、あしたも、その次のあしたも、その次の次のあしたも、その次も、となりに、いたい』

レインはグリムロックを見つめた。こみ上げてくる優しい温かさに目頭が熱くなった。

『あ゛ー俺グリムロック、いつもそう。いちねんに一度ここくるから、サンタクロースの神様にいちねんぶん願いたいのに、俺グリムロック、次の日を何回言ったか途中でわからなくなる』

レインが微笑んで、グリムロックの指先にキスをした。

「グリムロック、次の日の先を、まとめてひとつにする、魔法の言葉があるんだよ」

レインが微笑んで語りかけた。

『レイン、本当かそれ!俺グリムロック知りたい!教えろ』
「"ずっと一緒"」

グリムロックが同じ言葉を繰り返す。

『ズットイッショ…』

レインはにっこり笑って頷いた。

『あ゛』
「え?」

再び水平線に視線を移したグリムロックが、何かに気づいたように、海の方向に指を差した。

「うそ……」

レインが指先を追うとそこには、月明かりに照らされた、夜の、虹。

『よかった、俺グリムロック、これサンタクロースの神様が俺の願い聞いてくれたあかし。レインにこれ見せたかった』

レインが思わず涙ぐむ。

「ありがとうグリムロック…」
『喜ぶ顔、みたい!レイン笑え!俺グリムロック笑う。わはははは』

間抜けなグリムロックの笑い声に、笑い泣きして、また虹を眺めた。
不器用な子供のような彼の手のひらで、何よりも、誰よりも温かい、クリスマス。

「グリムロック」
『あ゛ー』
「また連れてきてね」
『俺グリムロック、何回でもつれてくる!』

七色の光は、ズットイッショの未来を、照らし出している。



2008/12/20
企画/Xmas 7days

ダイノボットアイランドの捏造した設定のモデルはハワイです。夜の虹は実際に見ることができ、現地では『祝福の虹』といわれる特別なものなのだそうです。アンケートにご協力下さった皆様方、ありがとうございました。