実写パラレル/美しき悪夢 | ナノ
×
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -

31.すべての終わりとはじまり



城塞では白兵戦を余儀なくされるほどに窮していた。

「もたもたしていたらここも落ちるぞ!」

ラチェットが叫んでいる。兵の数が足りないのだ。陸・空の両方から攻撃を受けている最中、耳をつんざくような爆発音を聞き、耳がおかしくなり近くにいたバンブルビーに必要なく大声で必死に呼びかけた。

誰でもいい、ダークナイトを探してくれ!!作戦を立て直したい!!
「了解!!」

敵味方入り交じり、甲冑がこすれあう音が聞こえる。
今日何人殺したかわからない。振りかざす聖剣は、血塗られた剣に変わっていった。

「オライオン!!ダークナイト達が見当たらない!!」

アイアンハイドが叫びながら、矢を撃とうとした辺りの敵兵を、巨大なトマホークで一掃した。

「ディセプティコンの野郎!!!クソッ、オライオン!!一端退こう!やっぱり奴らの狙いはこの国だ!!」

マイスターは敵兵を愛槍で貫き、厳しいまなざしでそう叫んだ。
国王を守らねば、エイリアルは、…エイリアルは?
約束した。約束したのだ。必ず守ると。

引き返せ!!全軍退却!!

何も守れないのか、私は…







「キャアァアァ!!」

女だろうが、

「ぐ、ぐふっ……!!」

男だろうが、

「たすけて!」

子供だろうが、

………
「…た…すけ…て!!」
─撃て、ボーンクラッシャー
「はっ!」
「─!」

──儚い。
儚いものだ。実に。
さあ聖女よ、何処にいる?我が生け贄になるがいい。
死により我がもとへ還るがいい。

「聖女を捕らえろ!!」
「聖女を探せ!!」

走り回るブロウルとブラックアウトを背に、俺は城を目指した。
そうだ、まず希望を絶たねばならん。

「お、…おの…れメガトロン…!!!!!!」

国王の力は、"風"だ。
黒の風吹かす世を白の風で覆う。

その白の風………もうこの世に吹かぬようにしてくれよう

ずぶりと爪を立て噴き出す鮮血の中から青白いスパークを取り出す。
マトリクスは、聖の属性だ。これは我が力を衰滅させるもののひとつ。
これは、要らん。

「ぐ、お、おぬぉれええぇ…!!」

"栄華の中に生きた人、誰かはそれを運命だと云った。…宿命だとも、知らないで"

かはあっ、と血をとっぷり吐き出したセンチネルの意識がなくなっていく。

…さらばだ、センチネル・プライム




変わり果てた王都に愕然とした。
これでは、ケイオンの軍に攻め落とされた方がまだましだと思った。
手分けして生存者を探したが、誰一人として生き残っているものはない。
それどころか、我々に気がついたディセプティコンがこちらめがけて襲いかかってきた。

「ディセプティコン、攻撃せよ!!!」

エイリアルが時間を止める前なのか、止めた後なのか、それとも…止めることさえできないまま、メガトロンが力を奪ったのか…。
私は襲いかかってきた嘗ての仲間であるボーンクラッシャーを斬りつけ、いよいよ終末を予感した。
センチネルの元へ走った。

国王陛下ッ!!
「オラ…イオ…ン、未来、を…」
国王陛下ッ!!

握りしめられたマトリクスは、真っ赤な血に紛れ──抉られた胸は赤黒く染まっている。
センチネル・プライムは初めて私を認めてくれた人だ。王としてよりも、父のような存在だと思っていた。
だめだ、憎しみでは私の力が弱くなる。憎しみではお前には勝てない、メガトロン!!

だが─…、…だが─…!!!

間違っていた。私は力あるが故にメガトロンを崇拝していたが、その使い方の間違いに気がつかなかった。

エイリアルを救わねば。
まだ生きていてくれ、間に合ってくれ、頼む…!




「まだ城の中ではパラディンがうろついております」

大聖堂の入口で跪き報告してきた部下の言葉を受けた。
だが、ついさっきまで皆無だった人の気配を、此処で感じる。広大な大聖堂の中では己が小さく感じる。
祭壇に目を移すと、聖女はいた。

「いかが致しましょう、」

─ずっと、
一緒にいれたらいいのに


お前の願いを叶えてやろう。
その言葉が真の意味を持たないことを、禍々しい俺の中で後悔し、泣き叫べ。俺はお前を取り込み────、愛する"光"に会えなくしてやろう。

「──メガトロン様?」

今その名で呼ぶとは、小奴も不幸な男だ─…

─その名で呼ぶなと何度言えば─

血を吸え、カオスブリンガー。

「か、───」

一気に引き抜き、鮮血が生温く鎧に跳ね返る音がする。

…気が済むのだ

いよいよ恐れたであろう聖女は、それでも此方を振り向かなかった。
恐れているのか、いないのか。

貴様の力は、"瞬間移動"か
「は…!?、もう、もう二度と致しませぬ故…何卒、」
ああ、もう二度とその名を呼べぬ場所へ送ってやろう、そしてその力は俺の、糧となる

懇願する悲鳴を、打ち消す瞬間が至福のとき。抉りとるスパークは闇に染まってもなお、青く輝くのだ。

「そ、それだけは、う、うわ、ぐわああアアアア!!」

捻りきり、切り裂いた部下は抜け殻となった。

さて、聖女…、
貴様を殺してやる。
俺を愚かな人間としてつなぎ止めようとする、このか弱き思いよ、
逝くがいい…

──貴様が選ばれし者か

振り向いた聖女は、恐れていなかった。

──やはりお前が─、究極の力を授かった選ばれし者だったのか

エイリアル、なぜ恐れない、お前は…
なぜ、子供の頃と同じ目で、俺を見ることができる?

…メガ…トロン…

俺は今、何をされている?
なぜ今殺せない?

─その名は捨てた

エイリアルは兜に手をかけ、俺はそうすることを止めようと思えずただ、立ち尽くし──
俺の闇に染まった瞳を見ても、なぜお前は恐れんのだ…

…あなた、だったのね…、良かった…

良かっただと?
何故───

いき、生きていて本当に、

何故俺の為に涙を流せるのだ、何故そう言える?
何故だ──
闇に染まってしまった俺を、
今目前で平然と人を殺した俺を、

メガトロン!

何故受け止める?
何故放ってくれんのだ

─もう、お前が知る俺ではない
そんな事ない、そんな事、ない…!

…─彼女は私が守る

─オライオンの伴侶に?──俺を、忘れてか

図星か、やはりお前は俺ではなく、

─弱き者共よ、群をなさなければ生きていけぬ、愚か者めが

そんなに好きか、あいつが───

…お前がいると…、…我が力は衰滅する

俺は力が欲しい
故にお前が邪魔なのだ
どんなに愛しても
手にも入らぬお前を
お前がいると、俺の力が弱くなる

…お前がいると…

死に際でも─
何故微笑んでいられる?
何故───

あなたが生きていて、

嘘をつけ…

よかっ──
邪魔だ…っ…

刺された痛みを感じる暇もなく、取り込んでやる、そして永遠に俺の力となり─俺という闇なる牢獄へ──お前を閉じ込めるのだ────

お前は永遠に、俺のものだ!





エイリアル!!!

私は、間に合わなかった。
大聖堂の祭壇で貫かれた彼女の背中から突きだしていたのは、闇に染まった赤黒い斬馬刀だった。

ふ…ふはははは…!!さあ、力よ!!この地の底の闇に取り込まれるがいい!!命を奪ったのは、この俺だァァァ!!
メガトロン!!

剣と剣がぶつかる。

なぜだ!!!なぜなんだメガトロン!!

彼女を愛していたんじゃなかったのか──!!!

ほう、貴様はプライムになったのか、その胸のしるしは──、
お前は…!お前はあんなに彼女を愛していたのに!!

弾き飛ばされ、また交わるを繰り返し、私は泣きたくなるような怒りをメガトロンにぶつけた。

守りたいものほど、守れんものだろう、プライムよ
うおぁああッ!!!
憎め、恨め!その気持ちが俺の糧となるのだ!

あざ笑うメガトロンに、必死で切りかかった。

友だと…、友だと信じていた!!お前を信じていたのに!!!

幼い頃から憧れ、目指していた、お前だけを!

……遅かれ早かれこうなる運命だったのだ
お前は何も分かっていない!!

彼女の願いを!!彼女の祈りを!!

力を、力を取り込むのだ!!世界に選ばれたのは………この俺だァァ!!
ウオァアァァァァ!!!

これで、決着がつく。
お前を殺し、私も死ぬ。
これが償いだ、
全ての生きとし生ける命への………、

「───メガトロン、俺が相手だ!」

マイスター、来るな!!
そう思った時、世界が、

世界が、青白い光に包まれた。
俺はオライオンを刺し、剣をオライオンから引き抜いたときに気がついたのだ。俺のスパークもまた、完全に破壊するほど突き刺され、だが降りかかってきたチビのパラディンの腹を切り裂いた。全ては一瞬のような、ゆっくり時間が流れたような、世界に切り離されたような、不思議な感覚だった。

───そうだ、俺が奪った力はどこへ?…俺は奪えなかったのか?
…違う、俺は誰から奪おうとしていたんだ?何かを忘れている…待て、俺は何を欲しがっていたんだ?
なぜ俺は置いていかれる?
俺が切りすてたパラディンに必死に呼びかける若造の髪の色は、亜麻色だ。

「マイスターッ!!」

泣き叫べ。
そいつは俺が殺した。
俺はこれをどこから見ているんだ?

「ラチェット早く!!マイスターが!マイスターが死んじゃう!!マイスター!!」

愚かな、もうすでにそのパラディンは死んでいる。

「行くぞ!バンブルビー!!ここはもう落ちる!風がくる!!」
「待ってよアイアンハイド!!!まだマイスターは生きてる!!オライオンも、この女の人も!」
「もう皆死んでる!!」
「よく見てよ、まだ…まだ生きてるよ…!!マイ…スター…!!」
「いい加減にしろ、バンブルビー!!」
「い…嫌だッッ!!離せラチェット!!おいらは此処にいる、マイスターを置いていけない!!嫌だ!!!マイスターァァァ!!!!」

──黒の風か。
いいさ、吹くがいい。
だがなぜ俺は、…動けない?
おのれプライマスよ、
俺の時だけを止め──、
永遠の牢獄に閉じ込める気か!!

─おらいおんと、
めがとろんと、
わたし!!



ああ、オライオン、貴様がうらやましい。─そして憎い。
貴様は 愛すれば愛すほど光を湛え、

─ずっと一緒!!
─必ず帰ってきてね、
…ロン


なんだ、この感覚は。
全て忘れていく。俺はどこへ行くんだ?

エイ──……

思い出せん、あの抜けるような肌のお前は、───
ああ、もし同じ世界に生まれ変われるのなら、もう二度と…
お前を傷つけぬ世界へ…


:
:

オライオン?
それが名前?
私?
レイラ…


ああそうだった、
お前の名は、レイラ───


:
:


この感覚は!?何だ?──忘れるのか?私は…何もかも。私が忘れたら世界は、彼女はどうなる?──…彼女とは誰だ?
だめだ、マトリクスよ、どうか私の願いを聞き入れてくれ、──
全ての記憶をマトリクスにあずけ─
いつか力となり、
君を今度こそ助けに行けるように、今度こそ──!!


:
:

あのねおぷてぃます
おねがいがあるんだけど
レイラをおよめさんにして!



そうだ、君の名は、レイラ────