実写パラレル/美しき悪夢 | ナノ
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22.生きる屍の死せる刻


息をしなくなったレイラが、青い光を放ちながら、ゆっくりと透けていく。涙が柔らかい頬を通り過ぎて、首を絞めていた手に伝わる時には、もう冷たくなっていた。

『……レイラ……』

─すごく、すごく会いたかったから


俺が、殺した。

─ここに、いてもいい?


そう、俺が殺したのだ。

─ずっと一緒にいられたらいいのに


お前が欲しかった。
力が欲しかったよりもずっと、お前に触れたかった。

─必ず、帰ってきて


闇に染まっても俺は、お前に触れたかった。

『俺が…────』

お前に触れたかっただけだったのに…

『俺が殺した!!!何故…力が…手に入らない』

俺のものになったのに、

『なぜだ…!!』

奪った力は全て己のものにしてきたのに、何故お前の力だけは…

『俺に…力を………!!』

何度この苦しみを味わえば、俺はこの世界から解放される?
何度お前を殺せば、俺は許される?
虚しくお前が消えていく姿を、俺から離れてゆく姿を、俺は何度見せられれば許される?
彼奴のところへ帰るのか?
消えるな、何故お前ばかり消え、お前を殺したのにこの世界は生き続けるのだ、何故お前は俺に殺されたのに微笑んでいられる?

『………』

その身を捧げた先は、やはり光なのか。

…そんなに好きか、あいつが…






「レイラ…」

マギーが握った手には力がなく、レイラは起きなかった。

「もうとっくに目覚めていいはずなんだが…もう一週間もあのままで眠り続けている」

ため息をつき、ラチェットはレイラの友人達にそう説明した。
デバステイターと、ボーンクラッシャーが病室には入らずに、手を握りしめるマギーとレイラを見つめながら、その説明に困惑の表情を見せた。

「レイラ…」
「何があったってんだ…」

何も答えられないラチェットは、ただその場を立ち去る事しか思い浮かばず、次々に運ばれてくる障壁被災者達のもとへ戻った。
この一週間、ラチェットは家に帰れなかった。障壁は解かれ、被害者は増える一方だった。





警備のしかれたスクランブルシティへ行く途中、シルバーボルトに乗り込む人々は疎らで、いつもは誇らしげな管制塔がそれだけで廃れて見えた。珍しくはしゃぐバンブルビーも、今日ばかりは、黙っていた。
その理由は、ラチェットが教えてくれたたった一言だった。

─レイラが昏睡状態だ、原因は全くわからない。体力低下だけが理由ではこうはならない

「レイラ、どこにいるんだろう」

バンブルビーが、"そんな言い方"をするのはもう慣れてしまった。ジャズも同じように思った。
オライオンを探して、と言ってきた優しいレイラの顔を思い出した。幸せそうな女の顔をしていた。いつも図書室で絵本ばっかり読んでいた小さい時には見たことがなかった、満たされていた顔。

───メガトロンを、やむを得ずレイラの中に閉じ込めたのじゃ。

じじいはそう言った。
沢山の命を奪った罪深い魂を閉じ込める最後の策だったと、そう付け加えた。

───プライマスがそうしたのか?

その質問に、アルファートリンは否、と答えた。

───賢者達じゃ。今はプリーストと呼ばれたり、セネートと呼ばれたりしておるが
───セネート…だと…!?
───さよう、プリーストの七賢者は…、一人暗殺され、そして一人はその場を退き今は五人じゃが、この世を安泰に導くための使者じゃ。転生をせず、1000年を超えてもなお生き続ける…
───化けもんだな
───昔は志があった。長い時を生き続け、世を導き、この世界を存続させる為に残ったからの
───だが道に反してる
───さよう、世界は輪廻を繰り返し転生し、その時代を生きる命たちのものじゃ。生きる屍が…支配するべきではない
───オプティマスは、それを?
───あやつはまだ記憶を紡ぎ合わせておる途中じゃろう、セネート本部は大聖堂の地下じゃ。
セネート以外立ち入りを禁じられておる。今まさにオプティマスは真実を知るためにそこに向かっておるだろう。………ジャズよ、行って助けてやってくれんかの、未来を作ろうとしておるあの未熟な元首を
───…わかった。だがひとつだけ聞きたい
───…わしのことか
───やたらと詳しいんでな。…やっぱりじじいも…
───さよう、わしもプリーストじゃった。もう延命はしておらぬからお主等と一緒じゃよ
───延命、どんなもんなんだ?
───…行けば分かる。そしてプリーストを…、永らく生き続け正気を失ってしまった悲しき賢者たちを…、休ませてやってくれ……

シルバーボルトが雲を突き抜けるのには時間がかかった。
機内でバンブルビーとは、一言も言葉を交わさなかった。