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immortal ラストシーン

(音波さんとの出会い編のラストシーン。あのシーンの続き。本編ではカットしてあります。ご興味のある方はどうぞ!)


★★★★★★



「濡れちゃうよ」

人間が、愛しいその対象の口を塞ぐのは、
相手と自分との時間を
止めたいからだ。
息吹くたびに時間が流れて、死に向かって歩む彼女の時間を止める術を持たない俺は、──無力だ。

「夜みたいな色、」

見上げる瞳は髪に向かい、俺の濡れた髪の端をつまむ指先は小さい。ストールの中の世界は、彼女が生きている息吹と、俺の電子音、無意味で無力な、小さな宇宙だった。

『俺は……』

この宇宙が欲しかったのか。

『……わからない』

彼女は一瞬だけ、止まった。それから、なぜかわずかに笑った。

「わからないことが何かあるの?」
『…?』
「私の名前も、いる場所も、好き嫌いも、何もかも知ってた人が」

笑う唇が、色をなくして震えている。

『寒いのか』

夜の雨は、俺達を冷たく濡らす。寄り添ってきた体のひかえめなぬくもりと、どんな意味があるのかわからないのに、腕の中に彼女をおさめた。彼女も、俺の背中に腕を回した。
腕の中で笑った彼女を見るたびに、記憶回路のコントロールが出来ないことに気がついた。彼女が花畑が好きだと言ったとき、地球からその映像を引っ張り保存した。あの歌が好きだと言った時、それも取り込んだ。そういうものが、ぐるぐると俺の中を回る。

『七十億の中の一匹、』

知ったような顔で名を呼ぶなと、思うだろうか。

「サウン…」


──これ以上の衝動を知らない。今唇を重ね、彼女の命の入り口を塞ぐ。薄く開いた目から、記憶回路から溢れてしまった花畑がホログラムとなり俺達を包んでいるのがわかった。無意識だった。七十億の中の一匹は驚いて目を開き、戸惑いながら目を閉じ、唇を重ねることに集中した。

こうすれば、時間が止まる。
いつでも、俺達は永遠になれる。

俺達は、確かにここで宇宙を作った。
2009/10/26
もう少し徐々に関係を深める
というシナリオに変えたので
こちらの方はカットしました