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★スノーホワイト×ラチェット(初代)

以前初代祭りを敢行した時のログ。初代ページに置こうかと思ったけど、まぁ…ここでいいと思う、うん。

ご注意:こちらはパラレル、パロディ擬人化になりますので、苦手な方はご注意ください!少し長いので、途中で切れる等表示の不具合がございましたら大変お手数ですが御一報ください。なんのこっちゃない白雪姫です。










ねえ知ってる?
ここから7つ
お山を越えたら
そこには、がらくたをなんでもかんでも治してしまう、白いお医者さまが住んでいるんだって



Snow White
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Ratchet




遠い遠い星のお話。ある国の美しいお妃さまが、待望の赤ちゃんを授かりました。しかし、お妃さまは体が弱かったので、出産するその晩、7つのお山の向こうにある国で一番有名なお医者さんをそばにつけました。

『大丈夫ですよお妃さま、元気な御子が産まれます』
「ありがとうラチェット、あなたが居てくれるだけで安心して王の子を産めますわ」

外にはしんしんと雪が降り、とても寒い晩でした。お妃さまは、ご自分のお部屋にお付きの者とお医者さんだけを入れて、出産の苦しみに耐えなければなりませんでした。

「ああ、ラチェット。もしわたくしに何かあれば、」
『お気をしっかりと持つのです』
「この子を、」

おけから、ふわふわと柔らかいお湯がたちこめたころ、お医者さんはゆっくりとお妃さまの体から出てきた赤ちゃんを受け取りました。

『お妃さま!なんて可愛らしい!女の子ですよ』

お医者さんが抱き上げた、元気に泣いているお姫さまを見ながら、お妃さまはにっこりと幸せそうに微笑み、嬉しさで涙を流しながら、しかし、悲しいことにそのまま息を引き取ってしまいました。











王様は、お姫さまの誕生よりも、お妃さまの死を嘆きました。お妃さまが死んでしまったのはお医者さんのせいだと、王様は言いました。
お医者さんはお城から追い出されてしまい、二度とこの国に入ることが許されなくなってしまったのです。お医者さんは悲しみにくれながら、7つのお山を越えて帰ってゆきました。











さて、お妃さまが亡くなって間もなく、王様は新しいお妃さまをお迎えになられました。
新しいお妃さまは、先のお妃さまと同じくらい美しかったのですが、とりわけ自らの美しさに酔いしれてしまうほど自尊心が強い方でした。

「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだれ?」

その鏡の中には、世界のことがすべて見える、正直者の精がすんでおりました。

『俺グリムロック、お妃がいちばんうつくしい』

お妃さまは毎日、それを聞いては自分の美しさに酔いしれておりました。
けれども、ひとつだけお妃さまには心配がありました。それは、先のお妃さま以上に美しく成長しつつある、お姫さまのことでした。お妃さまは、継母である自分よりも、お姫さまが美しい大人になるというのを、どうしても許すことができません。ですから、いつもお姫さまにぼろを着せ、まるで使用人のように、お姫さまを扱いました。けれどもお姫さまは、どんなときも優しさを忘れることはありませんでした。ですから、城の皆はお姫さまが大好きでした。

『七十億の中の一匹。姫たるもの、ダンスにも精通していなければなりませんよ』

そう言って踊りを教えてくれるのは、マイスターという大公さまでした。

『けっ、そんなこと覚えなくとも、充分ニューリーダーにはなれるぜ』
『ニューリーダーっていうか、女王さま、だろ』
『なんでもいいけどよぉ、昼飯はまだかよ』

そんなマイスターと姫に茶々を入れるのは、門番の三羽烏、スタースクリームとサンダークラッカー、それにスカイワープといいました。

『というわけで、森にはたくさんの動物たちと、ミニボットと呼ばれる小人たちが住んどるんですわ』

知識と教養は、ホイルジャックという賢者さまと、パーセプターという賢者さまが教えてくれます。お姫さまには綺麗なドレスはありませんでしたが、毎日がとても楽しく思えました。

「ねえパーセプター、私が生まれた時のことを聞かせて」

ある時、お姫さまがそう尋ねると、今まで質問されることには余計な説明まで入れて長々と説明してしまっていたパーセプターが、表情を曇らせて口ごもりました。

『話してあげてもいいがね七十億の中の一匹さま、とてもつらいお話になるかもしれませんよ』

お姫さまは生まれた時の出来事を、すっかりパーセプターから聞いてしまいました。

『かの有名なお医者さまでも、王妃を救えなかった』

お姫さまはしばらく考え込んだ顔をしておりましたが、まるで花が咲いたように明るい表情に変わりました。

「けれど、私を救ってくれたのね、そのお医者さま。お名前はなんというのですか?」

パーセプターは懐かしむような表情で答えました。

『ラチェット。7つのお山の向こうの国に住んでいるよ。ホワイトの髪が印象的な、現代的にいえば超イケメン。超イケメンというのは量子力学的にいうと』

、というところまではお姫さまの耳に入りましたが、あとはすーっと右から左へ受け流しました。パーセプターの話は長いからです。ラチェットという命を助けてくれたお医者さんの名前を、お姫さまは胸に焼き付けました。そして大人になったら、一目でいいからお会いしたいなと思いました。










お姫さまが成長しますと、まるで晴れ渡った日のように美しくなり、さすがのお妃さまもその美しさには及ばなくなりました。
そしてとうとう、

「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのはだれ?」

いつもの質問に、鏡は答えました。

『俺グリムロック、お妃、たしかにきれい。でも七十億の中の一匹姫、お妃の千倍くらいきれい』

これを聞いたお妃さまは、それはもうびっくりして、お姫さまのことをバラバラにしてグチャグチャにしてもうそのまま湖に沈めてしまいたい、と妬みました。そう、このお妃さまは、優しい気持ちを持ち合わせておらず、自分より大切なものもなかったので、そんな風にお姫さまを憎らしく思ってしまったんですね。
お妃さまは、どんどん妬ましさや憎しみに支配されて、とうとう、四六時中お姫さまを妬み続け、落ち着かなくなりました。

それでお妃さまは、ひとりの狩人に、こう言いつけました。

「アイアンハイド、七十億の中の一匹を森の中へ連れて行っておくれ、私はあの子をもう見たくない。森に連れて行ったら殺してしまって、その証拠に、あの子の肺と肝を持ってきてちょうだい」

狩人は一度頷きましたが、どうにも納得がでけん!という気持ちをおさえなくてはなりませんでした。










狩人は言いつけの通り、お姫さまを森に連れ出しました。

「アイアンハイド!連れてきてくれてありがとう!!」

継母に冷たくされて、お姫さまらしいことは何ひとつできないのに、城から出ることさえ許されなかったお姫さまにとって、それはとても嬉しい出来事でした。
けれども、城ではめったに見ることのない美しい花々に気を取られているお姫さまの背後に、山刀を抜いた狩人がいることに、まるで気づきませんでした。

『………お姫さま、お許しを!』

ふりおろそうとした狩人は、振り返ったお姫さまの美しさにはっとして、いつもお城に狩りの戦利品を届けたときに優しく声をかけてくれることを思い出しました。

『お、俺には…!!俺にはでけん!!!!!』

そして、今にも泣きだしそうなお姫さまも、

「命だけは助けて、私、森の中に入っていって、もう二度とうちには帰らないと約束します」

といいました。
その約束を、城の家来たちがどれだけ悲しむかというのを想像し、狩人も悲しみにくれました。けれども、今はそれがいい方法のように思いました。狩人は、山刀をしまいました。

『それじゃお先に。お姫さまに出会えて俺は幸せだったよ。さあ、お逃げなさい、森を抜けて、遠い国へお逃げなさい』

狩人はそう言って、走り去りました。その後、お妃さまの約束をかたちだけ果たすために、飛び出してきたイノシシの子を刺し殺し、その肺と肝を持ち帰りました。

お妃さまは、狩人が持ち帰ってきた肺と肝を、塩味に焼いて、それをすっかり食べてしまい、ご自分では、お姫さまの肺と肝を食べたつもりでいました。








お姫さまは、一人取り残され、森の中を走りながら、なぜこうなってしまったのかを考えていました。森の中は鬱蒼とし、怖くて怖くてたまりません。それですっかり怯えてしまいましたから、小風が木の枝を揺らしただけでも震え上がりました。

やがて日も暮れ、どのくらい走ったのかも分からないくらい走った先に、一軒の小さな家がありました。何度かノックをしましたが、いっこうに誰も出てきません。
お姫さまは悪いな、と思いながらも、とても疲れていたので、その家に勝手に入ってしまいました。家の中のものは、なにもかも小さくて、かわいらしく、さっぱりとしていました。
7つのちいさなお皿は真っ白で、7つのスプーン、フォークなど、どれもこれも7つずつ、揃っていました。ベッドも、7つ。
お姫さまはとてもおなかがすいていて、のども渇いていたので、ひとつひとつのお皿からパンと野菜を少しずつ食べ、葡萄酒も少しずついただいて、食事がすむと、ひどく疲れた体をベッドにあずけ、そのまま眠ってしまいました。











今日もよく働いた小人たちが帰ると、家の中の様子がいつもと違うことに気がつきました。

『な、俺のパンがかじられている!!誰だ!血祭りにあげてやる!』
『まあクリフそう怒りなさんな、俺たちゃ今の今まで七人揃って仕事をしてたじゃないか』

怒りんぼうな小人のクリフを、窘めたのはゴングという小人でした。

『ほーんと。オイラの野菜もなくなってる』

そう言ったのはバンブルという小人でした。

『オレの葡萄酒もなくなってる!!』
『オレのもない!!』

そう言って騒いだ色違いの双子を、フレンジーとランブルといいました。

『全く迷惑きわまりないね』

そうぼやいたのはギアーズという小人。

『お、俺のベッドで誰か寝てる!!!』

そう言ってベッドを指さしたのは、チャージャーという小人でした。

『かわいいなあ』

7人の小人たちはそっとその寝顔をながめておりましたが、まもなく起き上がったお姫さまに、小人たちは尋ねました。

『やあお嬢さん、お目覚めかい?』

まじまじとながめてくる小人たちに、お姫さまは姿勢を正して謝りました。

「勝手に上がり込んで、食べ物までいただいて、本当にごめんなさい。私は七十億の中の一匹といいます」

そして、今までのあらましを話して聞かせました。

『そいつはひどいな!!!よしこの俺がその妃とやらを血祭りn』
『まあまあクリフ、そう急くな、どちらにしても、この七十億の中の一匹が生きているってのがわかったら、それこそ危険だ。とにかくここにいて俺たちが七十億の中の一匹を守ってあげなきゃなあ』
『ゴングの言うとおりだね。オイラも賛成』
『でもさァ、オヒメサマだったんだろぉ?』
『掃除洗濯できるのかよぉ?』
「あ、それは大丈夫、本当のお母さまが亡くなってからは、使用人の仕事をさせられていたから」
『お姫さまが使用人の仕事をするなんて、聞いたことがないよ』
『とにかく話は決まったな!!』

こうして、物語の流れ的に少々強引ではありましたが、お姫さまは7人の小人たちと毎日を過ごす事になったのです。










昼間はエネルゴンを掘り当てる仕事をしている小人たちに、七十億の中の一匹姫は毎日、おいしいごはんを作りました。
森での生活は、七十億の中の一匹姫にとって、そしてミニボットである小人たちにとっても、とても楽しいものになりました。


さて、お姫さまのいなくなったお城では、お妃さまがすっかり平穏な生活を取り戻していました。そしてある日、お妃さまはお気に入りの鏡の精に、いつもの質問をしてみることに。

「鏡よ鏡、この世でいちばん美しいのはだれ?」
『俺グリムロック、お妃たしかにきれい。でも森の奥で七人のミニボットとくらす七十億の中の一匹は、お妃の千倍くらいきれい』
「なんてこと!」
『俺グリムロック、嘘いえない』

鏡の精はすべてのことがみえましたから、お姫さまが生きていたことをとうに知っていましたが、ずっと黙っていました。嘘をつかない精でなかったら、嘘をつけたのに、ごめんなさい七十億の中の一匹姫、と鏡の精は心の中で謝りました。
お妃さまはというと、狩人のうらぎりはさることながら、やはり自分よりも美しいあの憎たらしい娘がまだ生きて暮らしているのだということがわかってしまいましたので、いてもたってもいられず、お城の賢者さまを呼びつけました。

「パーセプター、私はね、いなくなった姫をさがしたいのよ。つらくあたったことを後悔している。それで、私を老婆に変える薬をこしらえてもらえないかしら」
『……は?』
「だからね、私は老婆になりたいんだよ」

美しさに磨きをかけることしか頭にない女王様が、気でも狂ったかとパーセプターは思いました。

「物売りのきたならしいババになれば、だれも私が妃だとは気づかない」
『ご自身で姫をお探しになるつもりで?』
「当たり前さ、血はつながってはいないが私はあの子の母親なんだからね」

パーセプターは、やっと母としての愛がこのお妃さまに芽生えたかと内心喜び、姫が見つかったその日にはきっと真の愛にお城が包まれることを願って、二つ返事で老婆になる薬をこしらえました。しかしそれがお妃さまの恐ろしい計画につながってしまうことを、パーセプターは知る由もありませんでした。


『お妃さま、これはいわゆる不老長寿の薬とは逆の原理なのであります、つまりはこの』
「いいから早くそれをよこしなさいな」


お妃さまはパーセプターの説明を遮り薬を受け取りました。パーセプターの話は長いからです。それで、パーセプターが妃の間を出たのを確認すると、しっかりと戸を閉め、すっかり薬を飲み干し、老婆になりました。みはりのジェットロンたちも、お手伝いの侍女たちも追い払って、秘密の部屋へ入ります。そこはお妃さまの怪しい研究室でした。

「これであの憎たらしい娘もあの世いきさ」

老婆の手には、手間暇かけてこさえたような美しいリボンが、ありました。











次の日の朝のこと。
七十億の中の一匹姫はいつものように小人たちを見送りました。

『いいかい?俺たちが帰ってくるまで扉をあけてはいけないよ』

チャージャーがいいました。

「ええ。わかってる」

『誰も家に入れてはいけないよ』

今度はクリフがいいました。

「ええ。知らないひとは入れないわ」

毎日念を押されましたが、七十億の中の一匹姫は毎日、笑顔で頷くのでした。
小人たちを見送って、お日様が高く上る前に、七十億の中の一匹姫は洗濯物をすませました。それから、夕飯の仕込みを始めました。
お昼を過ぎたとき、トントン、と扉が音を立てました。七十億の中の一匹姫が扉へ近づきます。扉の向こうから、おばあさんの声が聞こえてきます。

「帯はいらんかね、きれいな帯だよ、世界に一つしかない、きれいな帯」
「ごめんなさい、誰も家に入れてはいけないんです」

しかし扉の向こうに見えるリボンを、七十億の中の一匹姫はとても気に入りましたので、おばあさんを家に招き入れてしまいました。

「まあ可愛いお嬢さんだこと、どれ、このばばが結んであげましょうね」

おばあさんはそう言うと、七十億の中の一匹姫の腰に、しっかりと結びつけました。きりきりと、服がきしんで、息も出来なくなりました。それでも絞めるのをやめないので、とうとう七十億の中の一匹姫はその場にぱったりと倒れてしまいました。
そう、おばあさんはあのお妃さまだったのです。

「さて、お前は美しいお嬢さんだったがね」

おばあさんは何食わぬ顔で小人の家を去りました。








小人たちが帰ってくると、それはもう大騒ぎでした。皆、それぞれお姫さまにおかしなところがないかを探しました。

『オィ見ろよ!これだ!!』
『いそいで外そう』

フレンジーとランブルがおばあさんのくくりつけた帯をはずすと、七十億の中の一匹姫は息を吹き返し、青かった肌に色が戻りました。

『まったく心配したよ』

ギアーズがそう言うと、七十億の中の一匹姫はごめんなさいと謝りました。

『きっとお妃が化けていたのさ。次は扉をあけるんじゃないよ』

ゴングもそう言いました。










城に戻ったお妃さまは、すっかりお姫さまが死んでしまったと思っておりましたから、いそいそと鏡に向かい、いつもの質問をしました。


「鏡よ鏡、この世で以下略」
『俺グリムロック、お妃しつこいなあ。七十億の中の一匹姫が千倍くらいきれいにきまってる』
「そんなバーガーな!!」

あの小娘は不死身なのかえ!?と叫びながら怒り狂ったお妃さまは、また怪しい研究室にこもり、なにやら作り始めました。

「今度こそは、よくよく考えて、おまえの息の根を止めてやる」


以前とは違う老婆に姿を変えたお妃さまの手には、毒のクシがありました。









そして次の日。

「いい品物はいらんかね、たいそうきれいなくしだよ」

七十億の中の一匹姫は外をのぞくと、そこには見たことのないおばあさんが立っていました。

「ごめんなさいね、行ってちょうだい。誰も中へ入れられないの」
「まあ見るだけ見てはくれんかね?」

おばあさんはそう言って、毒のクシを見せました。七十億の中の一匹姫はそのクシがたいそう気に入りました。今年は食欲の秋ではなく、物欲の秋ね、なんて思いながら、また扉を開けてしまいました。

「どれ、このばあさんがきれいにすいてあげるからね」

おばあさんはこういうと、その通り、髪にクシを滑らせました。しかし、たちまち体中に毒がまわり、七十億の中の一匹姫は気を失って倒れてしまいました。

「いくら不死身でも、今度こそお陀仏よ」

おばあさんはそう言い捨てて、帰っていきました。







夕方になり、小人たちが帰ってくると、またしても倒れてしまっている七十億の中の一匹姫に驚いて、すぐにお妃さまのしわざだとうたがいました。
結局、バンブルが髪にささっている毒のクシをみつけ、それを抜き取りますと、七十億の中の一匹姫は気がついて、またもやみんなから大目玉をくらいました。

『七十億の中の一匹、お前さんとびきりの美人だがちょっとおつむが足りないよ』
『そうだよぉ、わかってるだろお?』
「うぅ、」
『まあまあみんな、無事だったからよかったじゃないか』

わらわらと小人に囲まれて、いましめられて、これからはよくよく気をつけて、誰がきても決して戸をあけてはいけないと約束しました。



その頃、お妃さまもお城へ戻っておりました。


「鏡よ鏡以下略」
『俺グリムロック、あとなんかいこれいえばいいんだー、七十億の中の一匹姫いちばん、電話はにばん』
「ちきしょう!ちきしょう!」

お妃さまはもう腹が立って仕方なくなり、体中がふるえました。


「次こそは絶対、生かしておくものか。たとえこっちの命がなくなっても」


そうして今度は、研究室で毒リンゴを作りました。三度目の正直、もう少しでこの擬人化パラレルも終わりに近づいてきました。
この毒リンゴは、見た目はふつうのリンゴですが、ひとくちでも食べたが最後、たちまち死んでしまうのです。
お妃さまは早速百姓のおかみさんのかっこうをして、七人の小人の家に行きました。

扉の向こうから顔を出した七十億の中の一匹姫は、

「誰も入れてはいけないの」

と言いました。

「ああ、かまわないさ。このリンゴはね、もう捨ててしまってもいいかと思ってたのさ。ほれ、お前さんにひとつあげよう」
「遠慮しておきます、いりません」
「おやまあ、毒でも入っているかと思ってるのかい?いいさ、よくみておいで。このリンゴを二つに割るよ。赤い方をおまえさんがおあがり。白い方はわたしがたべよう」

実は、このリンゴはたいへんうまく作ってあり、赤い方だけに毒が入っていたのです。七十億の中の一匹姫はおいしそうなそのリンゴを扉越しに受け取り、毒の入った方をひとくち、食べました。
七十億の中の一匹姫はとうとうばったりと倒れ、死んでしまいました。
しばらく七十億の中の一匹姫をにらみつけておりましたお妃さまは、やがて満足そうに笑うと、お城へ帰ってゆきました。
お城へ帰ってから、鏡に得意げに質問をするお妃さまに、鏡の精はこのところうんざりしておりましたが、今日という今日は、世界からお姫さまの気配が消え去りました。鏡の精はさみしげにこたえました。

『…俺グリムロック、お妃がいちばんきれい…』

妬み深いお妃さまの心はやっと落ち着きを取り戻しました。











夕方になり、小人たちが家へ帰ると、またかよ!!と全員がつっこまずにはいられなかったのですが、今回ばかりは、なすすべがないことに気がつきました。
七十億の中の一匹姫は息をしていませんでした。


『七十億の中の一匹!!七十億の中の一匹!!オイラだよ!バンブルだよ!目を開けてよ!』
『七十億の中の一匹!!』
『七十億の中の一匹!』


かわいい七十億の中の一匹姫は死んだきり、生き返ることはありませんでした。
小人は中が見えるタイプのエネルゴンキューブ(大)を、フレンジーとランブルのお父さんであるサウンドウェーブから取り寄せて、それを棺にして、七十億の中の一匹姫を中に入れました。不思議なことに、そうしていれば体がくさることなく、まるで眠っているような姿をしている七十億の中の一匹姫を、いつでもみることができました。
丘の上に棺はおかれ、毎日かわるがわる小人たちが花を手向けました。









ある日のこと、七つのお山の向こうの国のお医者さんが、この森を通りかかった時でした。
丘の上におかれた棺を見つけたお医者さまは、そばについていた今日の当番チャージャーに、棺をあけて彼女を見たいと申し出ました。
チャージャーはためらいましたが、みんなに不在着信を入れて、一応連絡した感を出して、棺をあけることを許しました。

棺をあけたお医者さんは、ゆっくりと七十億の中の一匹姫の体を確かめると、

『救えるかもしれないなあ』

と言いました。
これを聞いて、チャージャーはすっかり嬉しくなって、またみんなに不在着信を残し、今度はそれぞれの留守電に『七十億の中の一匹姫生き返るかも!』と入れました。最後のギアーズまでくるとさすがに面倒くさくてメールにしました。


『わかった、これだ…』


お医者さんが、七十億の中の一匹姫の喉に詰まった毒リンゴを取り除くと、とても久しぶりに七十億の中の一匹姫は棺の中で目を覚ましました。
目の前にいたのは、ホワイトに近いシルバーの髪がきれいなお医者さんでした。そして、お医者さんも、目を開いた彼女を見て、何かを思い出しました。このきれいな目はもしかして。忘れもしない、見覚えのあるこのきれいな顔は、成長したあの時のお姫さまにちがいないと、確信しました。

『七十億の中の一匹姫さまではありませんか?』
「そういうあなたはラチェット先生」

ラチェット、と呼ばれたお医者さんはにこりと笑い、もうあまり、ふたりに言葉は必要ありませんでした。
またとない出会いが、ここにありました。

「生まれた時も、死ぬときも、あなたは私を助けてくださったのですね」
『そのようですね』


留守電をきいた小人たちも集まってきて、生き返った七十億の中の一匹姫に喜び、助けてくれたラチェットというお医者さんに感謝しました。



こうして、お姫さまはお医者さんの住む7つのお山の向こうで、お医者さんとふたりで、いつまでもいつまでも、しあわせにくらしました、とさ。




2009/11/09
企画/初代祭り