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Reason

ロボ・ウォリアー その2

冷凍庫に吊された豚がぷらりと揺れる。
うえ…というミカエラの後ろから、ユマはゆっくりついて行った。最奥の床にあるちょっとこの場には違和感がある鉄製のふたの取っ手を、シモンズはぎゅ、と握ったあと、

「今から見せるものは最高機密だ。…ママには、言うなよ」

と言った。
蓋が開くとそこは、冒険者の隠れ家のような不思議な空間へ繋がっていた。足場のあまりよろしくない梯子を降りながら、豚インフル怖え、と呟いたレオの間の抜けた声が反響した。
シモンズはそれには、豚にも牛にも、それはそれは悲しい過去があるんだ、とだけ答えた。
山積みになった古ぼけた資料達は、いったい何なんだろう。ユマはゆっくりと部屋を見回した。
シモンズは、不用意にオブジェを触っているレオに一度だけ注意した後、資料を漁りだした。乱暴にしか見えなくとも、さすが元エージェント、しっかりとどこに何があるかを理解しているようだった。ユマは、分厚いファイルの束を受け取った。古代の言葉がたくさん書いてある。

「よし、キューブ頭。お前の頭から投影された記号ってのは、この中にあるか?」

サムも、ユマも、食い入るように資料を見た。ミカエラとレオは、慎重に彼らを見守ることしかできない。

「ユマ、これ─、」
「古代のサイバトロン語、でも─」

ユマを不思議そうに眺めて、シモンズは首を傾げた。

「さっきから気にはなっていたんだが、この姉ちゃんは何者だ?」

資料に夢中になっていたユマは、かぶりをあげた。

「あ、ユマです」
「彼女はオートボットのリーダーの恋人」

シモンズの驚きったらなかった。

「─…あ、あのエイリアンの?な、どういう、」
「出会いは普通でした。駐車場で転んでケガをして、終電逃したら彼が送ってくれたんです」

資料に視線を移してサムと話し出したユマに、シモンズは信じられん、と首を振った。
謎だらけだ、と思っていたら、サムの声で現実に戻された。

「ねえシモンズ、どこで、とこでこれを?」

その混乱した態度に、シモンズは満足げだ。

「セクター7をクビになる前に、ちょっと資料を拝借したのさ」

梯子に登り、高い場所にジェンガのように積まれた年季ある資料から、手当たり次第に紙を抜き出している様子は、明らかに興奮している。

「75年以上にわたり調べた異星人に関する資料だ。トランスフォーマーだって?あいつらが来たのは二年前なんかじゃない。もっと大昔から此処にいた」

テーブルに戻ってきたシモンズは、たくさんのモノクロ写真を興奮気味にたたきつけた。

「なぜそんなことがわかるかって?考古学者たちがこういう説明のつかない模様や印を世界中の古代遺跡で見つけてきた。中国!!エジプト!!ギリシャ!!全く無関係の文明圏で全く同じ記号が見つかるというのは理由はひとつしかない。エイリアンだよ。地球に残った奴もいる」

全員が食い入るように写真を見ている。もう目の前にある写真を静物としては見れなくなっていた。

「これを見ろ、これはプロジェクト・ブラックナイフ。ロボットは姿を変え、身を隠して時代とともに進化した。最初は荷車。それから段々複雑な機械になっていったはずだ」

この状況を飲み込むのに、サムもユマも、ミカエラもレオも必死のようだった。

「姿を偽装できるロボットは、ずっといたんだ、そのへんに。各地で放射能反応が検出された時───、私は調べさせて欲しいと再三セクター7に申し出たが、反応が微弱すぎると却下され続けた。私の、妄想だと言ってな!!!」

憤るシモンズにユマはただ頷いた。
正直、この連なった文字たちは、ほとんど読めなかった。

「ごめんサム、私にはやっぱり全部は読めないみたい」

サムはユマを一度見て、急いだ口調でシモンズに言った。

「メガトロンは、地球にもう一つエネルゴンの源があると言ってた」

もう一つ、この、地球にか、とシモンズも夢中で頷いた。

「僕の頭の中にあるものでそこへの道がわかると」
「オートボットたちには、話したのか?」
「ああ、でもその言語が古すぎると言われて。彼等よりも前の時代の言語なんだ。ユマがオプティマスに何らかの影響を受けて読めるようになったみたいなんだけど」

ユマはそこで首を振った。

「ニュアンスは分かるんだけど、言葉に翻訳できないんです」

シモンズがはあ、とため息をついた。

「どん詰まりだな。ディセプティコンにでも聞くか?」

そして自嘲気味に笑って、

「といっても、知り合いはいないが」

と続けた。
そこで、意外な場所から返事が返ってきた。
ミカエラだ。

「私、いるわ」

09/07/21