実写/オプティマス | ナノ
×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -

Reason

暗転から見えた青い光

ことの重大さに気づくのは
いつだって起こってしまったあと
生きている者たちは皆そうして
間違いに辿り着く
どのくらい彼が
背負うものが重たいのか
あの威厳ある大きな体で
余裕に見える その
落ち着いた優しさに
何度身を守られてきたのか
彼に何ができたのだろう
痛みを半分持つどころか
何にも できなかった
ただ あの海よりも深い
汚れなきまっすぐな
優しさに包まれるだけ
そんな尊い幸せに
何度甘えてきたのだろう



3


宇宙の彼方では、ふたつの真紅の瞳が、闇という名の光を取り戻していた。

『─…最後の…プライムが…死んだか…─』



『─守備よくいったな』

メガトロンは、眼下にはびこる虫けらの作ったおもちゃのようなビル群を、ただ眺めてそう言った。

『ですがあの虫けらどもを見失いました、どうやらオートボットが妨害し…』

スタースクリームが、オプティマスにもがれた腕を持ち弱々しく背後でそれを言い切る前に、メガトロンが勢いよく無能な部下を蹴り飛ばした。

『たった二匹の虫けらを見つけることもできないのか、お前は』

足蹴にされ、スタースクリームは情けなく抵抗した。

『た、たった二匹といえども70億の中の二匹です!!』

メガトロンは立派な足を無能な部下からどけると、ふん、と鼻を鳴らした。

『プライムが死んだ今、もうあの小娘は必要ない。マスターが目覚めれば、訳者は要らんのだ。必要なのは、あの小僧だ!!虫けらは虫けらに探させればいい。─もう情けは無用、隠れるのは終わりだ!!』

スタースクリームがゆっくりと立ち上がる。

『我が師が地球に来るときがやってきたのだ』



何時間走ったのだろう。泣き叫んで錯乱していた自分を、ただ一度たしなめたジャズは、ディセプティコンがジャックしたメディアの情報を教えてくれた。
──サムを、差し出せという内容らしかった。
ソルスティスの走る音は、眠気を誘うほど快適で穏やかだった。けれども、絶望の淵にいる細い神経と心を繋ぐような柔らかい糸に、何度も呼び戻された。
穏やかなジャズの中では、冷静に自分を省みることが出来そうだった。

『こんな時こそ、冷静に、正しい事をするべきだ。オプティマスならそう言うだろう』

ジャズの言葉も、正しいと考えることが出来るようになっていた。
あらゆる方面から追い込まれると、結構冷静に受け止めることができるというのを、皮肉にもオプティマスの死で知った。しかし受け止めることはできても、受け入れることはできない。
彼はもう、すべてなのだ。

「…何が…」

思ったより、声がでない。ちゃんと発したつもりだった。

『ん?』
「何が、正しい事なのか…」

あんなに正しい存在が、正しくない存在たちに殺されてしまうのだ。

『…それは、自分自身しかわからんだろう』
「…………」
『自分にとっては正しくても、周りにとっては正しくないことだらけだ、この宇宙は』
「…………」
『だが大事にしろ、守ってもらった命。オプティマスにとって、ユマの命を守ることが、正しい事だった』

また泣きそうだ。
涙は枯れるくらいたくさん出たのに。

「……わかってる」

震える声を抑えて、そう言って俯いた時に、しゃり、と音がした。
首にかけていた、指輪が擦れた音だった。今の今まで忘れていた。
命よりも大切な宝物だと思っていたのに。
見たくない、と思いながらも、ふと衝動でシャツに入れ込んでいたボールチェーンをゆっくりとシャツの外に引き抜いた。

「………!!」

指輪は、温かさを失っているものの、青い光は、変わらずそこにあった。

「ジャズ、これ…!!」

──命ある場所には、必ず希望がある──

オプティマスはいつだったか、穏やかな声でそう言った。

『お前──…そんなもん持ってたのか……』

ジャズがぽつりと、そう言った。これが何かを、彼は分かっているようだった。

「二年前に貰って…」

指輪を見つめた。

『…スパーク・リングは、その思いに迷いや偽りが混じると精製が不可能なものだといわれてる。──お前しかいないんだ、オプティマスには』

──君に持っていてほしい──

「私しか…」

──君は、私にとっての最高の奇跡だ──

「……」

もう大丈夫だ。守ってもらった命の使い方が、わかった気がする。

「…ジャズ」
『?』

希望は捨てちゃいけない。彼は、ここに希望の光を残していったんだ。
世界を、諦めてはいけないって。

「サムのところに連れて行って」

09/07/17