実写/オプティマス | ナノ
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Reason

信じるもののための戦い

世界は、とても脆いものなのだ。大手を振って地球を支配したつもりでいても、それ以上の身体的に高度な存在が宇宙から飛来してしまえば、まるでグラスを割るように簡単に地球は滅んでしまうのだ。
オプティマスが倒れてしまってからたった五時間しかたっていなくても、希望を失ったかのように地球では不可解な侵略に侵された。世界最大級の海軍空母の沈没、死傷者は七千人強。
オプティマスを思うと泣きたくなるが、泣いては彼に失礼な気さえしてきた。泣いている間にも人が死んでいる。
サムの元に向かう途中で、懸命に頭を切り替えた。オプティマスが不意に大切な話をする時のように、集中した。オプティマスが教えてくれたこと、言った言葉、それから、世界の進み方。敵の要求。
手繰り寄せて自分のものにしなければならない。正しい方向へ。
オプティマスに頼まれたことを全う出来なかった。サムに伝えることができなかった。原因がどうであれ、それは事実だ。
結果、オプティマスを失った。
地球が織り成す自然災害にさえ勝てない人間がそれに立ち向かうのは無謀だが、勝つことはできなくても、それは目に見える以上の何かで補うことができる。
勝ち目はなくても。
それが最後の、悪あがきでも。
敵には出来ないことがある。絶対。数字を理解して論理に従う能力に長けた連中は、不安定な数字がない世界──、希望や愛なんてものを、脅威には感じないのだ。
彼らが、愚かしいとしか思わない情緒的関係にあの大きな足下をすくわれることもあるということ。
勝負するところは、その執念しかない。
今日起こった事を思い出しながら、そんなことを考えていた。

『着いたぞ』

ジャズの声で、思考の海から引き戻された。
かぶりをあげると、そこは廃墟と化した施設だった。頑丈そうな高いフェンスも、くたびれている。

『今夜はここで過ごす事になりそうだな』

太陽が沈んでいく物悲しい宵の口、ジャズが脆くなったフェンスを突き破って、そうつぶやいた。



オプティマスの遺体は、大型ヘリのチヌークを二機使って運ばれた。チヌークだけを見上げていると、慎重に降ろそうとしているようには見えないが、パイロットは必死だった。突風にあおられ、ストラップの固定も甘かった。残酷にも、空中で命令はくだった。
オートボットの指揮官は、廃棄処分された巨大な玩具のように地面に落とされた。傷だらけのファイアパターンに、二年間ともに戦ったNEST部隊の面々は、すぐに動くことができなかった。
オートボットの面々は、それぞれ集まりオプティマスの周りを囲んだが、その周りを空軍憲兵隊の車両が次々に囲んでいった。そして信じられないことに、オートボットの面々に発砲し始めた。

『何のまねだ』
『俺を撃つのか!?八つ裂きにしてやる!』

オートボットたちも、本能的に武器を起動している。憤るアイアンハイドの怒声が響いた。
その間に割って入ったのは、レノックス、そしてエップスだった。やめろ、やめさせろ!!とレノックスが叫ぶ。車両をたたきながら。

「武器をおろせ!」

憲兵が不機嫌に、それはあっちに言ってくれ、と返した方向の車両から、ギャロウェイが降り立った。

「少佐、君のNESTチームは任務を解除する。対ディセプティコン作戦は中止だ。ただちにディエゴガルシア基地へ戻り今後の指示を待て」

レノックスは強い口調で礼儀正しく反論した。

「我々はモーシャワー将軍の命令を受けています」
「大統領が私へ国家安全保障指令を出した。これから先は私が指揮を執る」

これももう必要ないな、と胸元をむしり取る官僚を、殴らないだけまだ冷静だと、レノックスは思った。

「エイリアン同士の戦争でわが国の兵士が犠牲になっている。秘密が暴かれた今、これは我々の戦争だ。そして我々は勝つ、軍事戦略を駆使してな。少数チームでのハンティングは終わりだ」

それには、ラチェットが割って入った。

『このバカは間違って理解している』

レノックスは間髪入れずにギャロウェイに詰め寄った。

「ここにいるのは最強の戦闘集団です!これを活用すべきです!!」
「我々に必要なのは全世界の軍隊を結集した戦闘計画を練ることだ。そして今回も我々が勝つ。あらゆる、外交的手段を考えている」

レノックスはショックを隠しきれなかった。

「それはつまり、少年を差し出すということですか」

一瞬だけ見つめ合い、だが正しいと思っているギャロウェイは、躊躇うことなく言い放った。

「あらゆる選択肢を考えている」

グラハムが耐えられず反論した。

「ディセプティコンの狙いが何にせよ、これは始まりに過ぎません」

レノックスも、言える事を言った。

「奴らに交渉なんて、不可能だ」
「命令だ、黙っていろ」

やはりこの官僚には、どんな言葉も通用しなかった。

「官僚の武器をありったけ使う覚悟をしておいた方がいいでしょうね」

レノックスの言葉にも、ギャロウェイは鼻を鳴らしただけだった。

「"大事な財産"は基地へ持って帰れよ、少佐」

オプティマスを一瞥して、顎でしめす顔が憎たらしい、とエップスも思った。

「あのガラクタも忘れずにな」

踵を返し、早々に去っていくギャロウェイを憎んでいない者は、ここにはいなかった。
エップスは去り行くギャロウェイを睨みつけながら呟いた。

「気に入らねえ…最低のクズだな」

落胆したラチェットが、ため息をつく。

『アイアンハイド、こんな星出て行くか』

サイドスワイプでさえ、同感だと頷いた。
しかしアイアンハイドは低くうなった後、首を振った。

『オプティマスなら地球に残ると言うだろう』

09/07/17