実写/オプティマス | ナノ
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Reason

未知との遭遇、その2

想像を絶する恐怖に立ち尽くすレオと、見ていられないと口を手で覆ったミカエラ、それから、メガトロンに腕を掴まれ、先の尖った指で張り付けられているサム、ユマからは全てが小さく見えた。

『貴様の肉をつかむのは気分がいい』

必死にもがくサムに近づこうと、スタースクリームの腕の中で何度も身を捻った。

『貴様を殺してやる。じわじわと、苦しめながらな。だがその前に手の掛かる作業をすませなければ』

メガトロンの低い声が轟く。それに耐えられずに、スタースクリームに問いかけた。

「な、何をするの!?」

スタースクリームは、僅かに電子音を立て、ユマへ視線を向けた。

『黙って見ていろ、じきにお前も同じ目に…遭う』

それだけ言って、眼下を見下ろしたスタースクリームの視線を、ユマは恐怖に耐えながら追いかけた。

『ドクター!!この"エイリアン"の体を調べろ!!』

何か小さなものが、サムの体を這っている。金属の足はカタカタとせわしい音を立てた。

『コッチヲ見ロ!ヨコセ、情報ヲ!』

スキャンしたり、つついたり、鼻を調べたりしている小さなディセプティコンに耐えられない程の恐怖感を覚えた。
ドクターが指を鳴らすと、それはどこからともなく現れた。うねうねと唸る助手らしき別の小型ロボットが、サムの胸に止まった。

『楽ニナルカ!!苦シムカ!!!』

耳障りなドクターの声が届く時、小型ロボットはサムの口内に侵入した。
何度もえずくサムを見ていられず、こちらも吐きそうになる。でも視線を逸らすことができない。
サムが吐き出したロボットは、しっかりと仕事を終えていた。
サムから抜き出した情報を反映させたドクターは、オプティマスが見せてくれるようなホログラムを空中に描き出した。ミカエラの笑う顔、ロンさんやジュディさんの顔、ミカエラ、ミカエラ、それから、並び替えられる文字を、ユマは見た。あれは古代文字だ。

『…おお、これだ。やはりキューブの知識は永遠だ』

メガトロンの表情が変わる。オプティマスの言うとおりだったと、ユマは思った。これを狙っていたのだ。

『コイツノ脳ミソ、取リ出シテ、テーブルノ上ニ乗セル!!!』

その場にいた人間が全員、凍りついた。

「な、なんだよ脳ミソって!!どうするつもりだよ!!」
『貴様の頭の中にあるモノが欲しいのだ』

サムが一番青ざめている。

ユマは振り向いてスタースクリームに懇願した。

「お願い止めて!!」

スタースクリームは、下品に笑った。

『止める?何故?』

後方で、メガトロンが叫んだ。

『スタースクリーム!その小娘の"抽出"も始めるぞ』
『了解しました、メガトロン様』

スタースクリームはユマと目線を逸らすことなく、頷いた。
サムは、恐怖でパニックになっている。

「ちょ、ちょっと待って、怒ってるよね、」
『気づいたか』
「わかる、当然だよ、僕は君を殺そうとしたんだからね、でもほら、白紙に戻してさ、関係を築き直さない?」

シュルシュルと動く回転式のものが、刃物だということは、此処から見ても、わかる。
ユマは首を振った。スタースクリームは、ユマを意味ありげに見つめたままだ。

「お願い、やめさせて、お願い…」
『人の心配よりも自分の心配をしたらどうなんだ?』

恐怖の体内ほじくり回しロボットは、今度はこちらに飛んできていた。

「!!」
『狙いは…あの小僧だけではない、ユマ…、プライムと"接触"した者しか得られんその解析能力を、お前は持っているはずだ』

息を飲む。赤い目は妖しく揺れた。
頭が回らない。
サムの叫び声が聞こえる。
わざとらしく、耳元でスタースクリームは囁いた。

『どんな…気分なんだ?虫ケラ…、プライムと"直結"する気分は』

涙が溜まる。
何も考えられない。
吐きそうだ。助けてほしい。
小型ロボットが近づいて、反射的に目を閉じた。涙がはじけた。



轟音と、衝撃がいきなり走る。体が浮く感覚に目を開けると、スタースクリームは弾かれていて、ユマは手中から離れていた。
体が宙を舞っている。目まぐるしく景色が回る。

「う…あ、」

戸惑いながらも、落下している事に気づいたユマは、恐怖でしか意識をつなぎ止めることができない。
一瞬、ラリーイエローの巨大な物体が壁をぶち抜いたのが見えた。
大きな爆発音が響く。
ふわ、とした感覚のあと、ガシンと何かにぶつかった。コンクリートに体を打ちつけたと思ったら、違っていた。掴まれたのだ。

『ユマ!!サム!!』

耳に届いた懐かしい声に、ユマは顔を上げた。
声がでなかった。
オプティマスはユマを左手に掴んだまま、エネルギーパルスをメガトロンに浴びせた。ユマは回転するオプティマスにしがみついているのに精一杯だった。
オプティマスは、スタースクリームを叩き込み、乱暴につかんで放った。
スタースクリームが擬態しながら建物の外へと退避していく。

その間に、ミカエラとレオも逃げていた。バンブルビーがビークルモードに素早く変わった姿だけが、オプティマスの手の中で、見えた。
オプティマスの動きが目まぐるしく、ユマは必死で彼の指の関節パーツを握り締めた。振り落とされないよう踏ん張った。
オプティマスが対峙したメガトロンに至近距離で放った銃弾は、真正面からメガトロンの胸に命中し、その巨体は荒廃した工場の壁を突き破った。
オプティマスは開いた大穴から外に出る直前に、やっとユマを見た。見つめ合ったのは、一瞬だった。

『無事で良かった』

工場から外に出て、逃げ遅れてしまったサムと合流した。
二人でオプティマスに乗り込む。
彼は全速力で走り出した。

『掴まれ!!!』

09/07/14