実写/オプティマス | ナノ
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Reason

急速に動き出す運命

宇宙を守る
あなたにとって
私は小さな小さな星の
70億のひとりにすぎない
あなたのいちばんに
いつかなれる日がくるかな
それが今日だったらいいのに



2


オプティマスと電話をしたあと、素早く準備を整えた。
最終便は飛んでしまった。仕事から帰ってきたままの格好で、明朝一番で発てるように、入念に準備をした。
こんな時の為に有給はあるのだ。
的確な判断をして、しなければならないことをした。会社に電話、航空会社への電話。
オプティマスの事を頭から振り払いながらつとめて冷静に考え、驚くほどスムーズに時間が進んだ。できるだけ早い便に乗れるように手配した。
空港内のホテルの予約も幸い取れたので、今夜のうちに空港に向かえば、朝一番の飛行機に乗れる。
電話を切る前、"何があるかわからないから気をつけろ"と言われた。"何か"あったときの為に、いつものヒールとは別に、スニーカーをバッグに詰めた。
フーバーダムで撮ったみんなの写真、その時にバンブルビーが撮ってくれた、二人の写真。写っている穏やかな笑顔と、青い目を見るだけで、頭も体も心もオプティマスでいっぱいいっぱいになる。写真を見ながら、アクセサリーを詰め込んでいるバスケットに入ったボールチェーンを取り出した。オプティマスの指輪を通し首にかけ、襟元からシャツの下に入れ込む。手荷物検査場で指輪が引っかかってはアウトだ。
必要最低限のものをバッグに入れ、髪を束ね、携帯をジーンズにねじ込み、時間はまだあるがいてもたってもいられずに、家を出た。オプティマスに頼られることが、こんなに自分を突き動かすなんて思っていなかった。
どきどきして、今なら何でもできる気がする。
まだサムに、会ってもいないのに。



『戻ったぞ、スタースクリーム』

ユマがサムに会いに行こうとしている裏側では、メガトロンが復活を遂げていた。オールスパークの破片で。
復活したその足で(その翼で、の方が正しいかもしれない)船艦ネメシスに辿り着いていた。

『メガトロン様、ご復活されて、何よりです…』
『よくもあの忌々しい星へ置き去りにしたな』

荒々しく掴むメガトロンを、スタースクリームは直視できなかった。

『やむを得ず、ですメガトロン様。貴方様が不在の間、誰かが指揮を執らねばなりません……し…っ!!』

叩きつけられた先は無数の命が誕生を待つ命の《付け根》だった。そのうちのひとつは、衝撃があった場所ではじけ、中味がずるりとスタースクリームの肩へとなだれ落ちた。

『たとえ死んでいても、俺が指揮官だ。生きて現場にいるお前の声より不在の俺の呼ぶ声の方がよく届くのだ』

そう言い終わった後、メガトロンは"主"が眠る場所へと移動した。

『──戻ったか、我が弟子よ』

その"存在"は異質だった。メガトロンが平伏すのはこの存在だけだ。かつて、或いは今も、目の前にあるそれは"プライム"であるのだろうか。

『マスター、私はしくじりました。オールスパークは破壊されてしまいました』
『──オールスパークは破壊されたのではない。その姿を変えるだけ。オールスパークは永遠だ。今は地球の…、お前を負かした虫けらの少年が器となっている』

メガトロンは跪いた体を浮かせ、主に近づいた。

『…本当にそんなことが?』
『──あの忌々しい星に何度戻る事を夢見てきたことか。私はあの星で裏切られた。かつて兄弟と呼んだ…プライム達に!!』

高速で回路が答えを導き出すのに、人間よりも時間はかからないのだ。メガトロンは屈辱に耐えるような顔をした。

『──あの中には、我々が存続しうる命の源を吸収出来る在処が…隠されている。
私を倒す事が出来るのは、プライムだけだ。
そして今残るプライムは…一人だけ』

プライム、の言葉に、メガトロンが憤怒した。

『オプティマス!!奴が小僧を守っています。マスター、私があの体から全ての肉を引き剥がします』
『──やるがいい、弟子よ。だがその前に、在処を発見するのが先だ。在処は、嘗て兄弟たちが使っていた言葉で記されている。今のお前達では…、解読が出来ないだろう』

弟子は、さらに主に近づいた。

『ではマスター、どうすれば…』

『私を負かす事の出来る唯一の存在と"接触"した存在を探し出し、それを使い解読するのだ。そして在処を見つけだし、果たすのだ。復讐を…』

力を休ませた主から、赤い光が消える。
メガトロンは立ち上がった。
そばで聞いていたスタースクリームが近づいてくる。

『メガトロン様、小僧の居場所はわかっています。監視ならすでに』

振り向いたメガトロンに、跪くスタースクリームは、続けた。

『…オプティマスと"接触した存在"、心当たりがないわけではありません、こちらも監視を』

メガトロンがトランスフォームする。
二機は再び青い星目指して、飛び立った。

09/07/06