地上波放送中140字ssチャレンジ2
ガレージで少しだけ時間くれる?と聞くと、sureと乾いた声。隣に座ってたくさんおしゃべりしていたら、不意に目が合って、時間が止まる。出来心で、
「あのさ……今キスしてって言ったら、ビー、どうする?」
彼が瞬きをやめた。
私の目を、左目、右目と交互に見て、
「……いいの?」
と返され固まった。
ガレージで少しだけ時間くれる?と聞くと、sureと乾いた声。隣に座ってたくさんおしゃべりしていたら、不意に目が合って、時間が止まる。出来心で、
「あのさ……今キスしてって言ったら、ビー、どうする?」
彼が瞬きをやめた。
私の目を、左目、右目と交互に見て、
「……いいの?」
と返され固まった。
彼女がくれた、紙の四隅は茶色く色褪せている。何度開いたのか、その思いは小さな文字で、何年たっても色褪せずにある。業火に散った彼女を拾い集めた10年前の記憶、俺はあとどれだけ離れていなければならないのだろう。腹癒せの衝撃波で、人間が、彼女の元へ逝く。そっちに行きたいのは、俺なのに。
「君は私のどこが良くて、一緒にいるんだ?」
唐突なコンボイの質問に思わずぽかんと口を開けたまま、彼の黄金色のオプティックを見上げた。
「あ……えーと、どこ、どこ!?あー……優しいですよね、あと、あったかいです、何より他のみんなのことを考えてるし、あの、」「わかった、もう、分かった」
みんなで作戦会議をしている場面だった。彼は真剣な表情で指揮を取っている。ふと、彼等の目線の高さに目が行った。同じ目線には、なれない。それなのにこんなに想いが膨らんでしまって、それを伝えられぬまま、今に至る。
「─どうした?何かあったか?」
急に視界に入ってきた彼はしゃがみ込んでいる。
肩に乗り、歩くたびに、じゃら、じゃら、と大きな音を立てて首元の鎖が揺れる。支えてくれる歪な彼の手が冷たい。雲1つない空、11月の金属生命体は冷たさもひとしお。
「こんなに天気がいいなら弁当でも作ればよかったんじゃねえの!俺食えねえけど」
……で、弁当って何、と笑う彼の赤い目が眩しい。
足音が冬の音になっている。彼と歩幅を合わせるのは難しいが、彼が歩幅を合わせてくれるから一緒に歩けるのかもしれない。
「はたから見ると、私達ってどう見えるのかな」
何の気なしに聞いた事を間髪入れずに、
「我々の関係に、他者の見解が必要なのか」
と返される。
「誰が何を言おうと、我々は真実だ」
深夜の海底基地は金属の一部が唸る音。情報参謀に与えられた部屋は流石に設備上等、だけどそれは彼が過ごしやすく改良した賜物で。モニターの向こうを見た。急に掬い上げられる。赤のバイザーの向こうに、どんな瞳を湛えているのか分からない。キスをしたいな。
「……多分、お前と同じ事を考えている」
「うう、寒いね」
帰り道の街灯はぼやけたオレンジで、見上げる空は冬の遠さ。横を歩く彼が、急に立ち塞がった。それから、両手で頬を包み込んできた。
「は、ふ……」
「表面温度、42度」
「あっ……たか……!」
「悪いな、人間の格好だとこれが精一杯だ」
それ以上の温度にするつもりなのが、少し可愛い。
「ビーがお前の事を好きだと」
金属の口角が上がり、「……どうする?」と見下ろしてきたバイザーの向こう側で、彼がどんな表情をしているのだろう。
「……うんと、嬉しい」
だから自分も笑顔で、そつなく曖昧な答えを返す。
「……あ、そう」
斜め上を仰ぎ、いつも自信満々の口角が下がった彼に戸惑った。
ただいま、疲れたし面倒になる前に、お風呂、入ってくる。玄関から入るなり彼女はそう言って、疲れた瞼を見下ろせば、物言いたげな顔で見上げてくる。
「……体、俺が洗うか?」
目が大きく開き、
「い、いいよ!大丈夫!」
と慌てる疲れ果てた彼女を見て呆れる。
「なぜお前は…こう、素直になれんのだ」