mononoke2 | ナノ
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仕事をしていれば、1日はあっという間に終わる。
しかし今日は早く帰りたいと時間ばかり気にしていたせいか、やけに長く感じた。
夢香が裏口から帰ろうとしたところ、実希が「待って待って」と引き止めた。


「虹高の近くに可愛いカフェができたんだって、今から行ってみない?」
「あーー……」


行って見たいとは思うが、今は早く帰りたい。贅沢を言えば、一ヶ月間は。


「ごめん、早く帰らないといけなくなって……」
「あれ、……もしかして家に誰か待たせてる?」


実希の言葉にぎょっと目を丸くさせた。勘がよすぎないか。
頷くような曖昧な感じに返すと、実希は力強く夢香の両肩を掴んだ。


「もしかして彼氏できた!?」
「え!?まさか!」
「だよね、よかった」


若干失礼じゃないか。


「じゃあ何待たせてるの?教えてくれないと確かめに行くよ!私今日暇だもん」


人懐こく踏み込んでくる実希の性格。もう付き合って大分経つためお互いに遠慮が無い。
薬売りの存在を教えてもいいだろうが、ほんの少しの間は秘密にしていたかった。独占欲だろうか。


「……ねこ、拾ってさ」
「ねこ?え!見たい!」


咄嗟に口にした理由が逆効果だったことに焦る。


「まってまって!今日は本当に、ねこも人に慣れてない感じで…!」


薬売りを思い浮かべながら、罪悪感。
彼は人に慣れないどころか、軽く掌の上で転がすことだろう。


「そっかー、じゃあまた今度!でもどんなねこ?」
「うーん……凄く美しいよ」
「え、野良じゃないの?」


夢香はその言葉に苦笑で返した。これ以上はボロが出る。
実希と別れ、早足で帰路を進んだ。
帰りしなに目に入る、古本屋。次に寄るのはいつにしよう。
そんなことを考えながらも今は帰るのを優先させ、自分の家のドアの前に立った。
インターフォンを鳴らす。薬売りはいるだろうか。いてほしい。


わくわくする気持ちと不安が入り混じっていたが、がちゃりとドアが開き夢香はほっと笑みを零した。


「おかえり、なさい」
「ただいま!」

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