samurai7 | ナノ
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※ニ十八話には性的内容が含まれます。しかしこのまま進んでいただくと、描写部分を取り除いてあります。
性的なことがあった事実に変わりはありませんので、そこをご了承いただいたうえでご覧になって下さい。

描写があっても大丈夫という18歳以上の方は、こちらよりどうぞ。
申し訳ありませんが、ご覧になっていただくには鍵が必要です。
完全に請求制となっていますので、お手数ですがこちらよりお求め下さい。




都との戦が終わり、夜も更けた頃――。カンナ村は祝いの雰囲気に包まれていた。
御馳走を並べ、農民達は笑顔でサムライ達の勇姿を語り、戦を勝利でおさめたことを讃え合う。
しかし、村外れの水分りの家では静かな時が流れていた。


「コマチ、そろそろ寝なさい」


家系図を抱きかかえ、船を漕いでいる姿にキララは見かねて声を掛ける。コマチはハッとして赤くなった目を開き、首を横に振った。


「……おっちゃまの帰りを待つです」


負傷し、頭だけになってしまったキクチヨは、マサムネに治してもらうため、すでにカンナ村を発っていた。
ユメカは俯いたコマチの頭を優しく撫でる。


「コマチちゃん、キクチヨが帰って来た時に、元気よく迎えてあげたいよね?」
「勿論です!おっちゃまにおかえりって、言ってあげるんです!」
「じゃあ、今日はもう寝よう?キクチヨも、もうゆっくり休んでるはずだよ」
「……うん」


小さく頷いたコマチは、布団の敷かれた隣部屋へしぶしぶ向かった。そこには早く床についたセツと、怪我をしたゴロベエが眠っている。
そして今、カンナ村にサムライはゴロベエ、カツシロウ、キュウゾウの三人しか残っていない。カンベエ、シチロージはキクチヨをマサムネのもとへ送り届けるため付き添い、ヘイハチはすぐにでも治療を受けなければ危険な状態と判断し、御座船でボウガンとロクタによって、虹雅峡で名高い医者のもとへ向かったのだ。


「みんな、今頃ゆっくり休めてるよね」


キララは水分りの衣装を縫う手を止め、ユメカの言葉に頷きを返す。その表情は囲炉裏の揺らぐ明かりのせいか、憂いを帯びているように見える。


「キララちゃんも、一緒に行きたかった?」


カンベエと。
そう言いたげなユメカの意を酌み、くすりと笑う。


「いいえ、私はもう、あの方のお側に居る理由がありませんから」
「……無理してない?」
「大丈夫です。自分でも驚くくらい、今とても穏やかな心地なのです」


これまで自分の意思を抑え、水分りの巫女の像を守り続けていたキララにとって、恋を選択したという事実が、心を軽くしてくれたのかもしれなかった。


「私のことよりユメカさん、側に居ることの出来るあの方を放っておいてもよろしいのですか?」


キュウゾウのことを指しているのは明らかで、ユメカは頬を赤らめ、俯いてしまう。


「ふふ、ユメカさんは自分のことになると、立ち止まってしまわれますね」


痛いとこをつかれ、ユメカは更に肩をすくめる。


「皆がまだ頑張っているのに、私ひとりが浮かれるのも……」


戦が終わったとはいえ、仲間達は沢山の傷を負い、未だに命懸けの戦いは続いているのだ。それなのにキュウゾウの側に行ってしまえば、その現実を忘れてキュウゾウだけを見つめてしまう。それ程に恋い焦がれている自覚があった。


「いいじゃないですか。それに、ひとりではありません。――キュウゾウ様も、ユメカさんのお側にいたいのだと、私は思うのです」


キュウゾウも同じ気持ちでいてくれるのだろうか。


「……私、行ってくる」


意を決して立ち上がると、キララは優しく微笑み返した。

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