samurai7 | ナノ
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※少々グロめ(流血等)の表現があります。苦手な方はご注意を。ご自分で判断してお読み下さい。




一日の食事は今や蛍飯などではなく、必死に隠し蓄えていたカンナ村の古米。
本戦に備えて大掛かりな作業をしている今、皆の身体に力をみなぎらせるために必要な食事だった。
ひとつひとつ愛情をこめて握るのは、娘の仕事。
サムライ達は外で汗をかき体力を奪われるため、塩を多めに付けて握る。
ユメカもその作業に加わっていたところ、日が暮れた頃に戸口から声が掛かった。


「ユメカ、皆ギサク殿の家に集まったが」
「あ、シチさん!ありがとう」


シチロージが「いえいえ」と、屋内に入り沢山の握り飯が積まれた山を見た。


「うまそうですな」
「よかったらお先にどーぞ」
「お!特権。んじゃ、失礼して」


へらっと笑い、シチロージは握り飯に手を付けた。お腹がすいていたようでひとつをぺろりと平らげてしまい、娘達から笑みが漏れる。
丁度握り飯も作り終え、ユメカは一山を抱え上げた。


(もう、迷わない)


これから皆に自分の全てを話す。


「キララちゃん、行こう」
「はい。コマチ、そんなに持てるの?」
「大丈夫ですよ!おっと、ふー」


コマチが沢山の握り飯を持ち落としそうになるのを、キララがはらはらと見守る。
ユメカはくすりと笑い、しっかりとした足取りで皆が待つ元へと向かった。
ギサクの家についてみれば、キュウゾウが腕を組み、目を閉じて戸口に背を預けて立っていた。気配を感じたのかユメカの姿を視界に入れ、ユメカがあっと声をかけようとする前にまた目を閉じてしまう。
疲れているのだろうと思ったユメカは声を掛けるのをやめ、そっと家の敷居をまたいだ。


「おごめーん!」


コマチが元気な声をあげた時、サムライ達が今の状況を伝え合っている所だった。
しまったというように口を結ぶが、握り飯の登場とあって休息の雰囲気へと変わる。


「いやはや!待ってました〜!」


ヘイハチがにっこりと笑みを深め、キクチヨは我先に駆け寄り握り飯を両手に取り上げる。そこに釘を刺すようにカンベエが言った。


「握り飯はひとつで良い。残りは村の者で分けるがよい」


ふたつ握り飯を手にとってしまっていたキクチヨは、しぶりながらも素直にひとつを握り飯の山に返した。農民たちも、今やサムライと同じく戦っているカンナ城の兵士。サムライと農民を同等に考えるカンベエに、皆異論は無い。


「あの。みんな、食事する所悪いんだけど……いいかな」


ユメカの改まった様子を不思議に思い、皆が疑問の色を浮かべて視線を向ける。そんな中カンベエのみ強い眼差しを向け、頷いた。
まるで今日のこの日を待っていたかのような、しっかりとした頷き。
ユメカは緊張と同時に、この人になら言っても大丈夫という漠然とした確信を抱いた。


「大事な話があります」

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