samurai7 | ナノ
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サムライ狩りの発令により、虹雅峡中が不穏な空気に包まれた。


既に上層部からサムライ狩りは始まっていたのか、
此処を含め中層の区域であるすぐ上の階も騒がしくなってくる。
一般の男装をしているユメカは問題無いが、
刀を携えているためサムライとしか言いようの無い、ヘイハチとカツシロウの立場は悪くなった。


サムライの情報提供をするだけで米十俵もの褒美が出るということもあり、
周りにいる人がちらちらとヘイハチとカツシロウに視線を送りだす。


「あちゃー…これはまた。
一旦戻ったほうが良さそうですね」


ヘイハチの苦笑しながらの言葉にカツシロウとユメカは頷き、
人目になるべく付かないよう、狭い路地を選び帰路を進んだ。


マサムネ宅目前の道まで来た時、
まばらながら大人数の足音が工房の方から近付いて来るのに気付き、ユメカ達は驚いて端に寄る。
その横を、武器を手に様々な格好をした者達が、
それぞれまるで痛みを堪えるように表情を険しくして通り過ぎていった。


(今のは……キクチヨが連れてきた人達?)


ユメカがアニメであった出来事と一致しそうな情景を思い出しながら前方を見れば、
先の方にカンベエとゴロベエ、キララにコマチ、そして事の発端だったであろうキクチヨがいた。
やはりそうかと納得し、急いで皆のもとまで行く。


「何かありましたか?」と状況が分からないヘイハチが問えば
「なに、ハズレくじをキクチヨが引いてきてな」とゴロベエが言葉を返した。
先程、ハズレくじという言葉通りのことをカンベエの手によって証明されたようで、
キクチヨはゴロベエの言葉にぐうの音も出ないで立ち尽くす。


大まかな説明と先程すれ違った人々の様子で、
今まさにサムライ狩りで捕まっていた者たちを連れてきたのだろうとヘイハチも理解し「成る程」と頷いた。


「ん?おお!ユメカか」


いきなり自分に向けられた言葉にユメカは驚いてゴロベエを見る。
ゴロベエはユメカの近くに寄り、ぽんぽんと頭巾の上から大きな手を乗せた。
がっしりした手は優しく叩いているのだが、ユメカには強い衝撃で思わず前のめりになる。


「いやー!一瞬誰かと思ったぞ。上手く男装したな」
「あ……ははっ。そうかな?」


ゴロベエの笑い声にユメカはつられて笑うが、ゴロベエの手によって頭巾がずれ、視界が奪われた。
わたわたとその手から逃れる。


「ゴロベエ殿。今は男装中ですから、名はイチですよ」
「おお、そうか!実名を呼んでは男装の意味が無かったな。すまぬイチ!」


ヘイハチに言われ、更にゴロベエは愉快そうに笑う。
頭巾を元の位置に戻し、ユメカは逆に乾いた笑いを返した。


(これから……虹雅峡を出ることになるよね。
今思えば男装ってかなり意味無いんじゃ…!)


悲しい事実に気付いてしまった。

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