samurai7 | ナノ
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「嬢ちゃん大丈夫かい?」


いつの間にか襖は開いていて、マサムネが立っていた。
その後ろからリキチも心配そうに顔を覗かせる。
ヘイハチは眉をハの字にさせ、笑みを見せた。


「なんとか」


マサムネはヘイハチの腕の中で、規則正しく寝息を立てるユメカを見て頷く。


「水分りの嬢ちゃんも叫び声に気付いたんだが、
コマチ坊がその膝を借りて寝ちまったもんだから駆けつけられなかったんだ」


寝室となる部屋にはヘイハチとユメカのふたりのみで
他の者は帰ってくるサムライを、土間で起きて待つことにしていた。
しかしコマチはまだ幼いため、眠気には勝てなかったのだろう。


「まぁ、落ち着いたんなら良かった。水分りの嬢ちゃんにも言っとくよ」
「はい」


マサムネは襖を閉めた。
再びこの部屋にはヘイハチとユメカのふたりきりになり、
ヘイハチはもう一度、眠るユメカの頭を撫で
先程ユメカからやられたように、頬に手を添えた。


「今見た夢は、忘れるといい」


まだ残る涙の痕をそっとぬぐい、にっこりと笑顔を浮かべた。















日が徐々に姿を現し始めた頃。
サムライ達がマサムネの工房に帰り、全員が揃った。


「では、キュウゾウが連れ帰ったと」


カンベエがキララに問い、キララは目を伏せ頷く。


「どうやら、かのサムライは完璧な敵という訳では無いようですなぁ」


ゴロベエが口角を上げ、カンベエを見やる。
カンベエは顎髭を撫で、考えるそぶりを見せた。


「キュウゾウが関わるとなると、今回の事はおそらく差配の息子が原因であろう」
「ウキョウ…!」


カツシロウが拳を握る。
キララはその名前に目を見開き、カンベエを見た。


「そなたと同様、差配の息子が気に入ったと見る。
ますます動き辛くなったな」
「…………」

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