samurai7 | ナノ

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(なんだかあの人、キュウゾウみたい……)


余りに気の抜けた考えを持ったため、自分に呆れた。
金色の髪は水気を含んでいるが、もっさりと例えていいくらいの特徴的な髪型。
しかしキャラクターに例える程の類似点では無いだろう。
赤い服だって着てはいないのだ。
髪型だけでそう思ってしまうのは、それほどにそのキャラを好きだからか。
こんな状態で思考が二次元に走るとは重症と言うしかなかった。


とにかく、ここで突っ立っているままでは何も進展しないだろうと、
意を決して目の前の人に恐る恐る近付いてみる。
金色の髪ということは外国人かもしれない。
夢香は日本語以外てんで駄目なため、
不安に思いながらも身振り手振りで頑張る決心をした。


男の近くまで来たその時、機械の破片を踏んでしまったのか、ガシャ、という音を立てた。


「―――ひっ!」


瞬間夢香は息を吸い込む悲鳴を上げた。
目では追えない速さで動いた男。
一方一瞬のことで、夢香は何が起こったのか分からない。
しかし首筋に宛がわれたひんやりとした感触に、無意識に動いては駄目だと理解し、目線だけで首に当たっているものを見た。


――刀。


降り続ける雨が刀の刃を怪しく浮き彫りにさせる。
命の危機を目前にして、背筋が凍った。
夢香はとにかく刀をつきつけている人を確かめようと、心臓が恐怖で大きく鼓動するのを感じながら刀に沿って視線をずらした。


息が止まる。
睨むように向けられた、虚ろな赤い瞳。


(うそ……)


容貌は見るからに――キュウゾウ。
驚きのあまり夢香が固まっていると、男は小さく口を開いた。


「……女」


その一言で興味が無くなったように刀を下ろし、またうつむいた。
男が漏らした声に夢香は更に目を見開く。
声もキュウゾウそっくりだったからだ。


信じられないが、此処はSAMURAI7の世界なのだろうか。
夢香は別の意味で心臓が鼓動するのが分かった。
しかしそんな非現実的なことはあるわけないと、冷静な脳が否定する。
混乱しながらキュウゾウに似た彼を見続けるが、再び男が視線を寄越すことは無かった。
先程刀を突きつけられたことが怖くて声も掛けられずにいたが、男の服に血が沢山付いていることに気付いた瞬間、咄嗟に話しかけていた。


「あの…!大丈夫、ですか…?」

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