samurai7 | ナノ
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本日のサムライ探しは、カンベエ、キララ、カツシロウ、ヘイハチ、キクチヨ、ユメカ――と、
大人数でのものになった。


キクチヨがはりきって皆の先頭を歩く。
なんだかこの光景は、何かおこった気が……とユメカが頭を悩ませていた時。


「お!」


キクチヨが立ち止まって、反応を示した。
その先には、階層を支える鉄柱に寄りかかるサムライの姿。


「……あ!」
(ヒョーゴ…!!)


驚いてユメカも声を上げる。
その変化に気付いたカンベエが、一瞬ユメカを見て、
前方にいるサムライに視線を移した。


「おー!そこのお前、
暇ならちょっくら顔貸してくんな」


キクチヨが使えるサムライか見極めようと、
挑戦的に、ヒョーゴに食って掛かる。
ヒョーゴがこちらを見た。


それを合図に、キクチヨが刀を振り上げ斬り込みに行くが、
ヒョーゴは軽々と身をかわし、的を外れた刀は地面を破壊する。


「機械のサムライに用は無い」


その言葉にカチンときたキクチヨが、懲りずにまた斬りにいこうとするが、
どこからともなくヤカンが現れ、行く手を阻んだ。
それをフンと鼻で笑い見たヒョーゴは、カンベエに近付く。


「手合わせ願おうか、猿山の大将殿」


失礼な発言に、カツシロウが前に出る。


「無礼な…!私が相手だ」


その行動に、ヒョーゴの表情は一変する。


「下がれ小僧!!」


あまりの剣幕と放たれた殺気に、カツシロウはびくりと肩を揺らす。
しかしキララに怯えながら名を呼ばれ、落ち着きを取り戻した。


「ご安心を。今日こそはお護りする」


カツシロウが刀を構えたまま、キララの前まで下がる。
その判断に、カンベエは「それでよい」と頷く。


「しかし護るのは……」
「攻めるより難しい。心得ております」


カツシロウの言葉を聞き、カンベエは前に出た。
刀を鞘から抜き、臨戦態勢に移れば
直ぐに刀のぶつかりあう戦いが始まった。
目の前の戦いにユメカは気を取られていると、
背後から機械音がした。


「ユメカ殿!」


名を叫ばれ、前方に居たカツシロウに強引に引き寄せられる。
ユメカの居たところは、新たに現れたヤカンによって刀が振り下ろされた。
呆然とカツシロウの腕の中で、そこを見る。


(今の……当たったら真っ二つだった)


ユメカの背中に汗がじわりと浮かんだ。
刀を振り下ろしたヤカンはじりじりと近寄ってくる。
カツシロウの背後にいるキララが「ひっ」と小さく声を上げた。


その時――地面が揺れ、軋むような音が辺りに響き渡った。
カツシロウの目の前の地面がヒビ割れ、足場を崩したヤカンが倒れる。


ヘイハチが策を練り、階層の鉄柱を機械で圧し折ったためだった。
支えを失った地面は徐々に傾いていく。
慌ててユメカは壁に手を伸ばした。


(掴むところが無い…!)


何も掴めず滑りそうになるが、どうにか地面に手をつき踏ん張る。
その横を、キララが転げ落ちていくのを視界に捕らえた。


ユメカは慌てるが、ちゃんとアニメ通りに進んでいるらしく
カツシロウはその後を追い、すんでの所でキララの手を掴む。
落ちそうになる体を、刀を地に刺し耐えた。


「チィ……」


地面が傾いたことで身動きが取れなくなったヒョーゴが辺りを見る。


農民に飼われたサムライ達を探すために連れて来たヤカンの姿は無い。
あのようなナリだ、落ちたのだろう。
目の前には同じく自らの体重を刀で支えるため、身動きが取れないサムライの姿。


そして、意外なものがヒョーゴの視界に入ってきた。

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