samurai7 | ナノ
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心臓が飛び跳ねる程驚き、ユメカは声のしたほうを見た。
その人物は、スケッチブックを覗き込みながら
にこやかな表情を湛えたサムライ――ヘイハチだった。


「はは、自意識過剰ですね。すみません」
「い…いえ…!」


内心ドキドキしながら、自然に対応しようと慌てて声を出す。


(描き途中で言われてよかった…!)


ヘイハチの特徴である帽子をまだ描いていなかったため、
どことなく似ている……ですんだということを理解する。


「声をかけてしまって……お邪魔でしたか」
「へ!?いや!全然…!」
「それならよかった。私、林田ヘイハチと申します」
「あ、ユメカです」
「ユメカ殿。いやぁ、美しい名ですね。
隣、座ってもよろしいでしょうか」
「ど……どうぞ」


近くなる距離に緊張しつつ、
隣に腰を下ろしたヘイハチを伺う。
名を褒められたため、少々照れながらユメカは口を開いた。


「あの、殿はつけなくていいですよ。
ユメカと呼んで下さって結構です」
「そうですか?ではユメカと。
私のこともお好きなように呼んで下さい」
「……じゃあ、ヘイさんっていうのは……」
「構いませんよ」
「ありがとうございます」


ヘイハチと会うことができた喜びを感じ、
ユメカは心から笑顔になった。


「絵がお上手ですね、あと歌も」
「……!
聞いてたんですか…っ」


ユメカは自己満足で歌っていたため、
恥ずかしくなって顔に熱が昇る。


「あまりに綺麗な歌声だったもので、
お声をかけずにはいられませんでした」
「な!?……お、お世辞はいいです…!」


慣れない褒め言葉に慌て、
ヘイハチの視線から逃れるためにユメカは俯いた。


「お世辞なんかじゃありませんよ。心が洗われるようでした」


更に過剰に言われ、ユメカは動揺しながらちらりと伺い見た。
相変わらず癒される笑みを浮かべていたため、
照れと恥ずかしさで少し唸りつつ「……ありがとう」とお礼を言う。

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