samurai7 | ナノ
06
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ふたりより先に、お風呂からあがったユメカは、
すでに洗濯が終わった自分の制服の袖に腕を通した。
砂も埃も付いていない、さらりとした感触が肌に心地良い。


(どこで落としたんだろ……)


しかし気になるのは無くしてしまった髪飾り。
思い返してみれば、ボウガンと盛大にぶつかった時が怪しかった。
ユメカは大きなため息をつく。


「……あつ」


少しのぼせてしまったのか、身体の熱さを感じ手を団扇のように動かした。
しかしいっこうに汗は引かない。
せっかく綺麗になった服を汗で汚すということはしたくなかったため、
ユメカは夜風を浴びに、少し銭湯の外に出ることにした。
外に出てみれば、階層のつくりのせいか時に風は強くなり
程よく肌の熱をさらっていく。


近くで衣がはためく音が耳に入る。
着ている制服が風によって強く舞っていた。
しかしその音は、自分の衣服が出す音だけでは無いことにユメカは気付いた。
音が発しているもうひとつの場所に視線を向ける。


すると、暗闇でも分かる強い赤が視界に飛び込んだ。


「っ!?」


ユメカの視線の先、距離が大分ある位置で自分と同じようにはためく赤い衣。
その衣を身に着けている人物、キュウゾウと視線が合い
ユメカの心臓は早鐘を打ち出した。


(キュウゾウ。何でここにいるの……?)


混乱して身動きが取れないユメカ。
すると急に風が穏やかになり、
キュウゾウの口がかすかに開いた。


「何故……」


寡黙なキュウゾウの発する言葉。
しかも自分に向けられた言葉であるため、ユメカは聞き逃すまいと呼吸を止める。


「変わらぬ」


(―――その姿


……あの時のままだ)


「……?」


キュウゾウは言葉の断片を口にし、
ユメカにとって更なる疑問にしかならなかった。
答える言葉が見付からず、沈黙の時が流れる。
その時……

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