samurai7 | ナノ
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「おい!サムライが近くで戦ってるってよ!見に行こうぜ」
「ああ!」


ユメカ達はコマチと合流し、サムライ探しのために通りを歩いていると、
ふいにその言葉が耳に入った。


「――!!」


(キュウゾウとカンベエだ!)


そろそろだと思っていたユメカは、
迷うことなくその言葉を言った男を追って駆け出した。


「ユメカ!?」


突然のことに驚いたゴロベエが名前を呼ぶ。
しかしユメカは走ることに夢中で、反応できなかった。
皆が追いかけ、ゴロベエはすぐに追いつく。


「どうしたのだ」
「あれ…!」


ゴロベエが聞いてきた頃にはもう、目的の場所が見えていて、
ユメカはふたつ下の階層にいるふたりを指差した。


「カンベエ殿」


ユメカの指す先にいる人物を見て、ゴロベエが名を言った。
丁度カンベエとキュウゾウが互いに、刀を首筋に当てているところだった。
身動きが取れずにいるふたりの周りを、円を描くように砂塵が上がっている。
ユメカ達は近くに行こうと、ひとつ下の階層に下りる。


緊張感のある静寂……


しかし、その静寂は唐突に破られる。


「惚れた」
「!?」


カンベエが突然、場にそぐわないセリフを言ったため、
キュウゾウは思わず動揺する。
その一瞬の隙に互いの刀は動き、刃先が首筋から離れる。
立て直すように、互いに距離をとった。


「おぬしの腕にな!」


カンベエがキュウゾウに叫ぶ。
その叫びを聞き、キュウゾウは唇の端を歪めてみせた。
カンベエが刀を下ろす。


「わけあって練達の士を求めている。
力を貸してもらえんか」
「相手は野伏せりであろう」
「知っておるなら話は早い。どうだ」
「断る!!」


キュウゾウが声を張り上げ、カンベエに踏み込んだ。
刀同士がぶつかり、金属音が響き渡る。
カンベエの誘いも虚しく、再び戦いが開始された。


カンベエは刀を使うだけでなく、建築資材の鉄パイプを投げたりと、
まさに実践的な戦い方でキュウゾウに挑んでいく。
カンベエが建築中の建物に飛び乗り、高い位置からキュウゾウに攻撃を仕掛けた。
だが、キュウゾウはそれを上手くかわし、
建物の支柱を刀でぶった切る。


カンベエの足元が崩れ、建物が崩壊した。
するとひと際大きな砂埃や瓦礫が舞い上がる。


「わっ!」


あまりの凄まじさにユメカは身を低くし、近くにいたコマチを守る。
更にその上から、ゴロベエが自らの身を挺して守った。


砂煙が落ち着き、視界が晴れる……。


ゆっくり瞼を開けると、視界の先に、
カンベエがキュウゾウの手を捕らえている姿があった。
カンベエの息は少々乱れているが、
キュウゾウの息は全然と言っていいほど、乱れていない。


「……儂は、おぬしにはかなわん」
「…………」
「しかし、おぬしに斬られる前に、是が非でも果たさねばならぬことがある」


キュウゾウが眉間のしわを深くする。


「すまんが、背を向けさせてもらうぞ」


カンベエは、ゆっくりとキュウゾウの手から自らの手を放す。
キュウゾウに背を向け、離れた。


「…………」


キュウゾウはその意図が分からず、
目の前の後姿を見据える。


「キュウゾウと言ったか。
おぬしと相まみえるのは、野伏せりを斬った後だ。
それまで待て」
「…………」
「それとも、この場で儂を斬るか」
「…………ふぅん」


キュウゾウは再び唇の端を吊り上げ、
左手の刀を持ち上げる。


「怖いです……」


殺気が張り詰められた様子に耐えられず、
コマチが小さく声を漏らした。
ユメカはその不安げな小さい肩に、優しく手を乗せる。


「大丈夫だよ、コマチちゃん」


(そう、大丈夫……)

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