samurai7 | ナノ
05
35 / 177

「危ねぇカンベエ!!」


ユメカの思惑通り、
殺気を吹き飛ばす程の力強い声が響き渡った。


「おっちゃま!」


コマチの顔が、ぱっと明るくなる。
目の前に現れたのは、瓦礫掃除が終わったキクチヨだった。


「うおおおおおおお!!」


後ろを向いているキュウゾウ目掛けて大太刀を振り上げ、跳び込む。


「……!おい!」


ゴロベエが止めようとするが、
キクチヨの勢いはもう止まらなかった。
キクチヨがキュウゾウの目の前まで迫り、
キュウゾウは振り向きざま瞬時に、キクチヨの持つ大太刀を、刀で弾き飛ばした。
そのまま斬る態勢を整えた時、
カンベエはキュウゾウの、右手の刀を弾き飛ばす。


「いってェェェェ!」


キクチヨはキュウゾウに大太刀を弾き飛ばされたことで、
態勢を崩され、資材に突っ込んでしまった。
大きな声の後、再び訪れる静寂。
だがそれは先程と違い、殺気が無くなっていた。


キュウゾウはカンベエを見る。
そして地面に落ちた自らの刀を蹴り上げ、右手で掴んだ。
カンベエが視線を向けるが、キュウゾウは既に背中を向けていた。
二本の刀を背中の鞘に納める。


「気が失せた。……いずれまた」


そのまま階段を上がっていく。


「……あ」


キュウゾウが近付いてくる現状に、ユメカ思わず引き止めそうになる。
しかし引き止める理由が無い事に気付き、
ぐっとそれを堪え俯いた。


夢か現実か定かでない場所で合ったキュウゾウ。
やはり夢だったんだろう、と自信は直ぐに無くなった。


ゴロベエは嬉々としてキュウゾウを見る。


そんなユメカ達の横を、
キュウゾウは通り過ぎていった……。


「ユメカ、今のキュウゾウとやらの知り合いか?」
「……え」


ゴロベエの言葉に、ユメカは耳を疑う。


「いやな、おぬしの方を見て、一瞬目を見開くような……
表情が変化したような気がしたのだが」
「――!?」


(え……うそ……)


「おっと、ユメカは記憶の断片を失っておるのだったな。
すまぬ。気にするな」
「……うん」


キュウゾウが自分に反応したのだろうか。
……すると雨の中で出逢った彼はキュウゾウで、夢では無いのかもしれない。


――夢でありませんように。


胸の前で自分の手を強く握る。
落ち着かない心臓がドキドキと高鳴っていた。
ユメカは困惑しながら、
キュウゾウが去って行った階上を見上げた。

×
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -