samurai7 | ナノ
04
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「皆様、紹介が遅れました。
この方は先程お話した、椿ユメカさんです」
「あ……っと、よろしくお願いします」


そういえば挨拶がまだだったということに今更気付き、
ユメカもみんなに向き直った。


――先程お話した


カツシロウも、そんな風なことを言っていたため
宿で皆で話していたとき、ユメカの話題でも出たのだろう。


(本当に私、ここに……いるんだな)


普通なら有り得ないことだが、
憧れていたみんなに知られている現状に、
改めてSAMURAI7の世界にいるのだと実感した。
ユメカにとって目の前にいる人達は、もう画面の向こうのキャラでは無い。


胸が温かくなる気持ちになって、ユメカは心から微笑む。
その微笑みによって、
花が咲いたかのように此処の空気はガラリと変わった。


「いやはや、なんとも美しい!
某は片山ゴロベエと申す。よろしく頼むぞ、ユメカ殿」


美しいと言われてユメカは目を丸くする。
しかしこれこそゴロベエの名ゼリフを言える瞬間だと悟った。


「あはは、ご冗談をー!よろしくお願いします!
でも"殿"なんて付けなくていいですよ」
「あっはっは!そうか!ではユメカと」
「うん」
「……儂は島田カンベエだ」
「よろしくお願いします」
「俺様はキクチヨだぜ!立派なサムライだ!ちゃんと覚えろよ!」
「あはっ。うん!」


一通り自己紹介が終わり、
キクチヨの保護者的な存在であるマサムネがみんなを見渡した。


「さぁて、どうするんだぁ?
あんたらマロ様に目ぇ付けられちまったんじゃ、サムライ探しどころじゃないぜ」


キララが動揺を見せること無く、この言葉に反応する。


「いいえ、続けます。
なんとしても七人のおサムライ様を、村に連れて帰ります」


意志の強い言葉を聞いたマサムネは、少し考え込む。
だが直ぐに、にっと笑って皆を見た。


「俺ん処に来るかぁ?」















最上階のマロ御殿前――…
そこに左腕を負傷し、不機嫌そうなボウガンが現れた。
姿を捉えた門番のかむろ衆は驚き、ボウガンに近寄る。


「ボウガン殿!」
「寄るんじゃねェ!……早く門を開けろ」
「……っ、御意」


ボウガンは構うなとばかりに、近寄るカムロ衆を右腕で払うようにあしらった。
しかしカムロ衆が扉を開けようとする前に、
何故か勝手に扉は開きだす。


睨むようにそこをボウガンが見ていれば、
開いた扉の先にテッサイが居ることに気付いた。


「…………」
「センサー男はどうした」
「……農民が雇ったサムライにやられました」
「任務の成果は」
「失敗です。……思った以上に手強い奴等かと」


テッサイの視線は、ボウガンの負傷した左腕に向けられる。


「成る程。その左腕……やったのは誰だ?」


ボウガンはその問いに、苦虫を噛み潰したような表情になった。


「大将と思われる、白装束の奴です」
「入れ、再び仕込み義手は用意しよう」
「……有難うございます」
「次の任務に備えて休むがよい。
だが、再び失敗は許さぬぞ」
「……承知」


ボウガンは頭を下げる。
それを見て、テッサイは御殿に戻っていった。

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