samurai7 | ナノ
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「おぬし達、賭けをしないか?」


ゴロベエの言葉に、どう出るのだと面白がり
センサー男の口角が釣り上がった。


「賭け?」
「さよう、賭けるのは己の命。
そこの弓使い、某この場を動かぬ故、一発撃ってみよ」
「……一発ではつまらぬ。五発ではどうだ?」


挑発するように笑みを見せ、
ボウガンは腕をゴロベエに向かって構えた。


「五発とは……」
「出来ぬと申すか?」
「いやいや、受けて立とう」


ゴロベエは苦笑するものの、まだまだ余裕といった表情を浮かべる。


「おぬしの矢が一発でもこの体貫いたならば、某迷い無くこの首進呈しよう」
「足りぬなぁ」
「おぬし達サムライも、農民も、全ての命を頂こう」


ボウガンはこの場を楽しんでいるのか再び挑発し、センサーも口を挟んだ。
だが会話を聞いたキクチヨが、下でカンベエに声を荒げる。


「なにぃー!?五発だぞ五発!!
あんな芸人風情に、俺たちの命預けてもいいのか!」
「…………」
「……先生!」


これにはカツシロウも何も言わぬカンベエに、答えを問う。
すると上でゴロベエが再び話し始めた。


「それではこう致そう。矢が外れた時は、我ら全員見逃していただこう。
勿論そこの女性もだ。某、おぬし達の命まで取ろうとは……


ゴロベエの話の途中、ボウガンは五発全ての鉄矢を一斉に撃った。
咄嗟にゴロベエは反応して、次々とギリギリのところで鉄矢を受け止める。
四本は指で上手く挟み、最後は歯で受け止めるという荒業だが、全て器用に受け止めきった。


即座にセンサーが跳躍する。
それを見てゴロベエは歯で受け止めた矢をはき捨てた。


「見逃せと言ったはず!」
「賭けは成立しておらぬ!」


そのままセンサーが機械の両腕を伸ばし、鉤爪でゴロベエに襲い掛かった。
戦いの様子に触発されたのか、キクチヨは雄叫びを上げ
ゴロベエ達の足場の階層をたもっている重要な柱を、自らの刀で破壊した。


「よさぬか!」


予想外のキクチヨの行動に、カンベエは声を張り上た。
だがもう遅く、ゴロベエとユメカの足場は盛大に崩れ始めた。


「ご冗談を……!」


すかさずゴロベエは崩れる足場を避け、他の柱の上部に飛び移り回避するが、
ユメカはいきなりの衝撃に耐えられず、掴んでいたボウガンの着物も手放しよろめいた。
気付いたボウガンが、すかさず手を伸ばしたが
自らの足場を先に失い、叫びながら瓦礫とともに落ちてしまった。
続いてユメカの足場が崩れる。


「ーーーッ!!」


ユメカは一瞬で死を覚悟した。
体力の基準が違う自分は、こんなところから落ちて命があるとは思えなかった。
地面に落ちたときの衝撃を恐れて目を瞑り、
体を硬直させるがいっこうにその衝撃は訪れない。


「…………?」


恐る恐る瞼を開けば、目の前にカンベエの顔があった。
今の状態をよく見れば、横抱きに受け止められたのだということが分かる。
どっと押し寄せた安心感と感動でユメカは感情が高ぶり、
勢いよく目の前のカンベエの首にしがみついた。


「ありがとうカンベエ…!!」


カンベエは一瞬目を見開くが、直ぐに冷静な表情に戻り
ユメカが地面に自ら立つことが出来る様に丁寧に降ろした。
身長差があるためユメカは自然と首に回した手を離す。


「…………」


互いの目が合ったが、カンベエの視線はユメカの後ろを見るように外れた。
視線の先に何があるのかと思い後ろを振り向けば
キクチヨの足元に鉄矢が刺さり、姿勢を崩すように後ろに倒れる姿。
その時瓦礫の中からボウガンが、狙いを定めてキクチヨの前に現れた。


――カンベエが動いた。


自らの衣を翻し、相手の狙いを自分に向けさせるようにキクチヨの前に入り込む。
するとボウガンはカンベエに狙いを変え、発射した。

カンベエは流れるように屈んだため、鉄矢は衣だけを射抜く。
カンベエは素早く下段に構え、ボウガンの仕込みの左腕に狙いを定めた。
重力に逆らうように、刀を滑らせる。


金属同士がぶつかり合う音がして、綺麗にボウガンの左腕は切断される。
驚きの声を上げるボウガンは、後ろに倒れこむような形になった。
カンベエはその隙を狙い、とどめを刺すため再び刀を上段に構える。



(ボウガンが死んじゃう…!)



「駄目!殺さないで――!!」

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