samurai7 | ナノ
04
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ガシャッ、という機械音と共にボウガンの構えた腕から、
仕込まれている五連射のボーガンが現れた。


(始まる……)


そう思った瞬間、装てんされた一発の鉄矢が、
勢いよく宿の入り口を目掛けて放たれた。


一瞬の静寂……。


「…………」
「外しましたなぁ」


センサーが宿の入り口を見つめたまま、
口元しか分からない表情に笑みを湛え、言葉を続ける。


「とうとう、必中の伝説も途絶えたというわけですか」
「一言多い。
だが、久しぶりに楽しめそうだ」
「それは同意」


すぐにまたボウガンが手を構え、今度は鉄矢を二本放った。
すると直後、入り口から長髪で顎ひげを持った男――カンベエと、
短く刈り込んだ銀髪に頬に大きな傷を持ったゴロベエが現れた。
後ろには機械であるキクチヨの姿も見える。


待ち望んでいた姿を見ることが出来てユメカは嬉しくなり、少しばかり身を乗り出す。
ボウガンやセンサーも嬉々として入り口に注目した。


「釣れた!」


その言葉がセンサーから発せられた刹那、
ボウガンがユメカの腰に腕を回し、まるで軽く荷物でも持つかのようにユメカを抱え跳躍した。


「ひっ―…!!」


ユメカは地面から随分離れた足元が怖くなり、
目を瞑りがっしりとボウガンの桃色の着物にしがみついた。


「悪いねぇ。ちゃんと捕まっといてくれよ」


ボソリと耳元で聞こえた言葉に反応して、ユメカは恐る恐るボウガンの顔を見上げた。
視線に気付いたボウガンは、ユメカを一瞬見て少しだけ笑む。
それは……アニメで見た人を挑発するような笑みではなく、どう見ても自然に出たものだった。


(やっぱり……悪い人じゃない)


助けたい――!


そうユメカが思った時、この場を震わす声が響いた。


「ユメカ殿!!」


名を呼んだのは困惑した表情のカツシロウ。
キララやコマチも、驚きと心配そうな様子でユメカを見ていた。


「ゴロベエ殿…!今抱えられている女の人は、先程話した私達の仲間です!」


既に応戦しているゴロベエに対してカツシロウが叫び、ゴロベエはユメカに視線を向けた。
その隙を狙うかのように、センサーはゴロベエに接近戦で攻撃をしかけ、
後を引くようにボウガンはユメカを抱えたまま、器用に鉄矢を打ち込んだ。


しかしそれを、宙を舞うようにゴロベエは避ける。
最後の鉄矢の一本は、顔を目掛けて飛んできた。
ゴロベエはそれを難なく素手で掴み取ると、宿から少し離れた高い場所に着地した。


続いてセンサーとボウガンもゴロベエから離れて向かい合うように、その場に着地する。
やっとユメカの足が地に着いた。
ボウガンが腰に回していた腕を放したが、ユメカは慣れない跳躍を経験して
足元がおぼつかず、咄嗟にボウガンの着物を掴んだ。


「アンタいい腕だァ、惚れるねぇ」
「どうも」


ボウガンの褒め言葉に、笑みを浮かべたゴロベエがさらりと言葉を返し、
先程掴んだ鉄矢を軽々へし折った。


「貴様も農民に飼われたサムライですか?」
「……気持ちよくなれるのだがなぁ」
「気は変わらぬと。
では致し方あるまい、しとめねばならぬ」


再び装てんされた左腕をゴロベエに構える。


「何故……」
「知ってどうする」


その言葉に暫しの沈黙。
だがふいに試すような笑みを浮かべ、ゴロベエは口を開いた。

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