samurai7 | ナノ
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おばあさんが奥にあるタンスをごそごそとあさり、取り出したものは
今髪に付けている髪飾りに似合いそうな桜色の着物だった。


「さ、このお着物に着替えとくれ」
「着物……」


(凄く素敵、だけど……)


「あの、ごめんなさい。着方が分からなくて…!」
「へ?常識じゃないか、親に習わなかったのかい?」
「……はい」


自分が居た世界では洋服が主流だったため、過去に少し着た記憶はあっても着付けの仕方なんて到底覚えてはいなかった。
ユメカが落ち込むと、ハッとしたようにおばあさんが口を開いた。


「ああ……ごめんね。色々事情はあるだろう。
おいで、着せたげる」


そう言って笑顔を浮かべる。


「ありがとうございます」


色々事情……勘違いさせてしまったかもしれない。
でも他に説明のしようがないため、
おばあさんの笑顔に、ユメカも笑顔で返した。












「いらっしゃいませー!」


数分後、一軒の装飾店が賑わいをみせていた。


「ねぇ。あの人店員だよね?可愛いくない?」
「ほんとだ。てかあの髪飾り可愛い!買っていこ〜」


聞こえてくる会話から、女の子達がユメカを見て宝飾に興味を持っているのは確かだった。
閉店大売出しということもあり、一度人が集まってしまえば自然と注目を浴びていく。


女の子達だけでなく、ユメカの魅力に魅せられた男達もいつの間にか集まった。
男に囲まれることに慣れないユメカは慌てたが「プレゼント用に買って行きませんか?」と、おばあさんの期待に答えようと客を上手にさばいていく。


そしてその様子に興味を持った者がひとり――


「なんだろうねぇ。あれ」


薔薇の花束を持った人物が、
興味津々といった様子で、人の集まっている場所を眺め、口を開いた。


「さあ、装飾品を売っている店と思われますが。
珍しいですな、あのように繁盛しているのは」


近くに控えていた、パイプをくわえた壮年の男がその問いに答えた。
それに対し、ふうん……と薔薇の花を抱えた男が返事をし、
特に店の前で人だかりになっている一点を凝視する。



人だかりの一部である男が動き、隙間が出来た。
隙間の先に見えたのは、美しく明るい笑顔の女……。


「うわぁ。よいねー!」


薔薇の男は、キラキラと目を輝かせて反応を見せる。
その様子とは反対に、控えた男は溜息を吐いた。


「若……」
「わーかってるってぇ。今はキララ君が先!あの娘は今度ね、テッサイ」


テッサイと呼ばれた男は再び溜息を吐いた。
若と呼ばれた方は再びユメカを眺め、含みのある笑みを浮かべた。


「君はもう、僕のモノだよ。ちゃーんと今度迎えに行くからね」
「…………」
「じゃあテッサイ!あそこでひとり、寂しそうにしているキララ君の所に行ってくるよ」


今まで眺めていた方向とは反対の、通りの向こうを見る。
その先には、カツシロウと少し別行動をとったため、
待ち合わせの場所に向かっているキララの姿があった。


「……承知いたしました」

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