samurai7 | ナノ
03
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「ユメカ殿!」


店が繁盛している時、ユメカの耳にカツシロウの声が響いた。


「カッツン!?どうかした?」


何故ここに戻ってきたのだろうと思い、急いで顔を覗かせれば、
キョロキョロと落ち着きの無い様子のカツシロウがそこにいた。


「ユメカ殿、キララ殿はこちらに来てないか?」
「ううん、来てないけど……」


呆気にとられて答える。だがすぐにハッとした。


(キララちゃんの振り子――!)


カツシロウの手には、紐が千切れてしまったキララの振り子が握られていた。


「そうか……。
実は、キララ殿が見当たらないんだ。私は一足先に宿に戻ってみる」


そう言うなり、宿の方に向かって走り出した。


「あ、待って私も……!」


『私も一緒に行く』そう言いかけるが、その言葉は途中で飲み込んだ。
ここは自分が居ない方がスムーズに運ぶと思ったからだ。


振り子が千切れてカツシロウの手にあるということは、
今は丁度、ウキョウにキララがさらわれた所――。


今からカツシロウは、宿に戻る。
そしてコマチとリキチの手によって、
今頃仲間になっているであろうキクチヨと一緒に、キララを助けに行く。


ウキョウの手下達と戦った末、
キララは先の続かないパイプに追い詰められ……飛び降りることになるだろう。
そこをカンベエに助けられて仲間になるはずだが、自分が言ってしまえばどうなってしまうか分からない。
第一戦えないのだ。だとしたら、キララと一緒に飛び降りることになるかもしれなかった。


(うわーー!無理無理無理…っ!
私にはそんな度胸なんて無い!)


バンジージャンプだってしたことも無いのに、いきなり命綱を無しに飛び降りるなんてできっこない。
足手まといになるのだったら、ここで大人しくしている方がいいと考えた。


「カッツン、頑張って……」


遠くなったカツシロウの背中を眺め、ユメカはそう呟いた。

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