samurai7 | ナノ
03
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(げ……)


座った面々を見て、ユメカは顔をしかめた。
先程のサムライ探しでユメカが阻止し、キララが声を掛けられなかったサムライも、
当たり前のようにそこに居たからだ。


(なんでー!)


嫌なお米の出費が減った。
そう喜んでいたのに、とんだ誤算だったため心の中で悪態をつく。


おおよそそのサムライは……キララに声をかけられなかった後、
コマチとリキチがサムライ探しをしている場所にたまたま行き、
声をかけられたのだろう。


「……はぁ」


これが宿命とか、運命というものなのだろうか。
決められた流れは簡単には変わらいのだと実感し、肩を落とした。
これから皆の運命を変えようと考えているだけに、ユメカは心底落ち込む。


「おさむれぇ様、どうぞ」


リキチは緊張しながら、サムライ達の目の前に炊き上がったご飯を並べていった。
サムライ達は礼も言わずにそれを受け取り、ガツガツと平らげていく。
食べる様子を見て、リキチはカンナ村を助けてほしいというお願いの件を話そうとした。
すると「暫し待たれよ」と、リキチの言葉を遮る。


(ほんと……最低な人達だな)


これからの展開が読めるだけに、ユメカは落胆した。
食べ終わった頃を見計らってリキチが再び声をかけようとする。
だがまず食べ終わった者がひとり、立ち上がった。


「馳走になったな。では、御免」


まさか食べるだけ食べて去っていこうとするとは思ってもいなかったため、
キララ達は反応出来ず、呆気にとられ見送ってしまう。
しかしすぐに残ったサムライに期待し、リキチは気持ちを切り替え
カンナ村を守って欲しいと詳しく話し始めた。
だが次のサムライも少し話を聞いてくれたかと思えば、


「おのれ拙者を愚弄するか!拙者の志はもっと大きい!失敬する」


そう言い立ち上がる。
その勢いに乗るように、ユメカが否定したサムライも


「お前達のほどこしは受けぬ。落ちぶれてもわしは武士じゃ!」


アニメ通り、出て行った。


その断りの流れは変わることなく、
結局、残ったのは空っぽのどんぶりだけだった。
こんなことではサムライなんて集まらないのでは……
そう誰もが思える状態で、皆疲れた表情になる。


「失望したな。これがサムライの義か」


そう呟いたのはカツシロウ。
ユメカはというと、やはり実際に呆れる現状を目の当たりにして、
むすっと部屋の隅で拗ねてしまった。


嫌な空気が室内に漂う中、キララは何かを考えるようなそぶりになり、
いつもの凛とした表情に戻った。


「明日からは範囲を拡げてみましょう。
稲穂が頭を垂れるまで、まだ日はあるのですから」


そのままユメカの方を振り向いた。
視線に気付いたユメカがキララを見つめ返す。


「ユメカさん、カンナ村を守って下さる立派なおサムライ様は……みつかると思いますか?」
「……?」


(え。何で私に聞いてくるんだろう。
キララちゃんも少し不安だったりするのかな?)


それなら安心させて自信を持たせなければ、と笑顔で答えた。


「うん。絶対みつかる!
さっきの奴等なんか比べ物にならないくらい、素敵なサムライはいるんだから」


キララは安心したように微笑む。
皆も心なしか元気を取り戻したようで、ユメカも嬉しくなった。
リキチがその場を仕切り直すように、口を開いた。


「さぁ、オラ達の飯作るだで。みんな、明日のために力つけるだよ」
「うん、じゃあ今日はちゃんと手伝うよ!力有り余ってるから」
「ありがとなあ、ユメカ」
「オラも手伝うです!」
「コマチ坊もありがとなあ」


夕餉の用意に取り掛かる賑やかな中に入ったユメカ。
その様子をキララがじっと見つめていることに
只ひとり、カツシロウが気付いた。


「キララ殿……?」
「……『絶対』。
確信のあるそのお言葉、信じましょう」


カツシロウに凛とした笑顔を向ける。


「……ああ」


当のカツシロウは、言葉に含まれるキララの意図がよく分からず、曖昧に返事を返す。
だがカツシロウも、立派なサムライだっているはずだと思ったためユメカの言葉を自分も信じようと考える。
そして自分自身、立派なサムライになろうと決意を固め表情を引き締めた。

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